第37話 現代武器はやっぱりツエェ


 血が撒き散らされながら、眞銀と楓はどさりと地面に倒れた。

 顔や体には血が付いており、第三者から見れば彼女達が重症、あるいは死んでいると思っても仕方がない。


「「けほけほっ!」」


 だが、彼女達は生きていた。

 己の首を絞める、手を払いのけ、呼吸を繰り返した。


 本当に殺されるかと思った。

 死が迫る恐怖を味わった。

 怖かった。

 怖くて、恐くて、苦しさと痛みと恐怖ではらはらと涙が流れる。

 けれどそこでふと思う。


 何故自分達は助かったのかと。

 そして先程自分達は何を払いのけたのかと。


「やっとちょっかい掛けて来たか。豊饒家」


 どこか楽し気な声を上げる一刀に視線を向けてみれば、そこには両手首を失い、血をどくどくと流しながらも獰猛な笑みを浮かべる姿があった。

 視線は森に向けられており、自分達には目もくれていない。


「戦闘が得意じゃねぇ聞いていたんだが、銃(スナイパーライフル)を使えば雑魚でもそれなりに戦えるようになるってことか。くくくっ・・・お~い、読唇術くらいは身につけてんだろ? 聞こえるよな? わかるよな? 俺の言葉が理解できるよな? わかるならさっさとこいつ等連れてけよ。じゃねぇと――――」


 何の脈絡もなく一刀は楓に蹴りを放った。

 顔を潰すほどの威力で、その一撃で楓の命を奪うつもりで。

 だが、やはりその攻撃は阻害されることとなる。

 パスッとなんとも気の抜けた音と同時に、蹴り上げた一刀の足は吹き飛ばされた。

 あまりの威力に一刀はたたらを踏みながらも転ぶことはなく、片足立ちのまま獰猛な笑みを浮かべていた。


「くははっ! いい腕だ。しかも使ってるのは普通の銃じゃねぇな。音がちいせぇのに、威力は普通のライフル以上だ。いいねぇ。欲しいねぇ。その武器は、効率的に人を殺せる武器は欲しいねぇ・・・なぁ・・それ・・・寄越せよ」


 そう言葉を発した瞬間、一刀の身体は異常な速度で再生される。

 吹き飛ばされた手足ばボコボコと音を立て元に戻る。

 その異常な光景を目にしても、一刀はただ笑みを浮かべるだけ。

 ただただ笑みを浮かべ、己の力が強くなっていくことへの喜びを感じるだけだった。


(いいぞ・・・・・いいぞ・・・・・・もっと異常になれ・・・そうすれば・・・・テメェ等を殺せるチャンスが得られる)

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