第33話 やられたら倍返しのお話


「遅いのじゃばかーーっ!」


 地下から出てくるとなぜか艶魅が涙目で怒っていた。

 人様にドロップキックをくらわせやがったコイツがなぜ涙目を浮かべているのか意味がわからん。

 怒りたいのはこちらだと言うのに。


「なかなか戻って来ぬから地下室の花子君に捕まってしまったのかと心配したのじゃぞ!」

「なんだその地下室の花子君ってのは。普通トイレの花子さんだろ」

「違うのじゃ! 可麗奈のお家の地下室にはそれはそれは怖い花子君おるのじゃ! 何でもおお、おお、おおお~う昔! それはそれは色白美人の男の娘がいたそうじゃ! そんな彼をめぐって世界中の男も女も殺し合ったと言う。その争いを止めるためにその色白美人の男の娘は地下室へと幽閉され、その後一生外に出さなかったという。そして一生一人で外に出させてもらえないことを怨みながら死んでいった色白美人の男の娘は悪霊となりて、今も可麗奈のお家の地下室で彷徨っていると言う。外に出る道を探してあっちへふらふら、こっちへふらふら、もしも地下室に入ってきた者がおれば・・・・・・悪いごはいねが~~~~っ! と襲い掛かってくるのじゃ! うひぃ~、おそろしやおそろしや。くわばらくばわらなのじゃよ」


 話が無駄になげぇし、どう考えても親がガキをからかう作り話だな。

 なまはげのセリフが入っている時点で恐怖も何も感じねぇし。


「そうか。ならさっさと行ってダチにでもなってやれよ。一人だから成仏できねぇんだろ?」

「と、友になれるわけなかろう! 地下室の幽霊は鬼面で金棒振り回す強面幽霊じゃぞ!」


 おい、色白美人の男の娘情報はどこにいった。

 それはもはや幽霊ではなく鬼だろうが。


「人を・・・いや、幽霊を面だけで判断するのは止めろや。中身はいい奴かも知れねぇだろうがよ」

「そ、それは・・・そう・・なのじゃが・・・」


 ちょんちょんと指と指を合わせ、歯切れ悪く答える艶魅。

 そんな艶魅の手を一刀は優しく掴み、優しく微笑みかける。


「お前はそんな酷い奴じゃないだろ? なんてった言ったって心優しい奴だからな」

「の、のじゃ!? ま、まぁの!」


 珍しく優しく声をかける一刀。

 しかも艶魅を認める言動に、艶魅は少しばかり機嫌よく頷く。

 そんな艶魅の態度になお一層一刀は優し気な笑みを浮かべる。

 そして


「だから行ってこいやクソボケがーーっ!」

「のじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 全力で地下に通じる階段に向かってぶん投げた。

 地下に悪霊がいるから俺を心配していた?

 だから何だボケが。

 そんな事より俺にドロップキックをくらわせた仕返しをする方が重要に決まっているだろ。

 おあつらえ向きにどうやら艶魅の奴は地下室がお嫌いなようだからな。


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