第31話 異形とのご対面・・・ではなく大馬鹿変とのご対面
「あ、あのクソアマ」
幸い大怪我を負ったわけではないが、それでも長い階段を転げ落ちたため無傷とはいかなかった。
全身打撲とまではいかないまでも、あちこち痛い。
まぁ、すぐに治るので気にするほどの怪我でもないが、それでも次艶魅を見つけ次第仕返しすることが決定した。
「貴様が一刀か」
「あ゛?・・・・・・・・・・・・・・あん?」
「ふん、随分と覇気のない顔だ。そして弱い。鍛えてはいるようだがまだまだまだのまだまだまだだな」
「・・・・・・・・・・・・・」
艶魅にどうやって仕返ししてやろうかと考えていると、転げ落ちた地下室から男の声が聞えてきた。
階段を転げ落ちた先は壁にろうそくが大量に掲げられており明るい。
そしてその明るい地下室には大型犬が入りそうなほどの檻と、何かを封じるように大量のお札らしきものが張られていた。
檻の中には何か真っ黒な獣のようなモノが丸くなっている。
「更に言うならば先程の無様な格好はなんだ。階段から滑り落ちたにしても間抜けすぎる。男ならそう言う無様な格好をみせるべきではないな」
「テメェに言われたかねぇよ。変態オヤジが」
そしてその檻の傍には・・・・・なんかいた。
なんか・・・・というか、変態がいた。
真っ黒な糸で亀甲縛りされている変態のおっさんが。
幸い裸でも下着姿でもないが救いだな。
まぁそれでも気持ち悪いとしか言えない装飾品でしかないが。
「誰が変態だ。あまり舐めた口きいてるとその舌引き抜くぞクソガキ」
「縛られて喜ぶ変態に引き抜かれる舌なんざねぇな。つか手足縛られている時点でそんなこと出来る訳ねぇだろ。頭大丈夫か?」
「誰が禿げだ! まだまだ現役バリバリのふっさふっさだろうが!」
「はぁ?」
禿げについて一言も言ってないのだが、なんか知らんが勝手に怒りだしたぞ。
意味わかんねぇ奴だな。
「重善さん(じゅうぜん)。婿殿が申した「頭大丈夫か」の意味は、髪についての問いかけではありませんよ。話の流れから髪についてお話していないことなど一目瞭然ではありませんか」
「天城ちゃん。天城ちゃん。そろそろこの薄い紙「薄くない!」で入り口を塞ぎたいのですけどいいかしら? ああそれと、重善さんを拘束しているあの薄くて細い「薄くも細くもない!」モノから解放してあげてはいかがでしょう?」
「・・からかうのが楽しいのはわかるけど、流石に今は私の夫をおちょくるのはやめてもらえないかしら? そして、ちゃんはやめてください。ちゃんは」
「うふふ、からかっていませんし、ちゃんはやめませんよぉ。だって今は楓ちゃん達がいないのですから」
「・・まったくもぅ。可麗奈ったら」
先程まで年下を甘やかすのが上手な年上のお姉さんと言った感じだった可麗奈だが、天城が現れてから感じが少し変わった。
見た目から可麗奈と天城は年が近そうなのでそれなりに仲が良いのかもしれないな。
「ボケ共。くだらねぇ禿げ話に花を咲かせてないで、さっさとアレについて説明しろ。隣の禿げと比べてフサフサの毛玉みたいなやつが異形とか言う奴なのか?」
「おいクソガキ! 誰が禿げだ! まだ現役バリバ「重善さん。少し黙っていてください」ふげっ!?・・・・・・・」
言葉使いは丁寧なのだが、私の話を遮ることは許さないと言わんばかりに天城は重善の首に黒い糸を巻き付け絞めて黙らせた。
夫とか言っていたが容赦ねぇのな。
今ので影宮夫婦の力関係がわかった気がする。
「はい、そちらが婿殿に見せたかった異形です。とはいえ中級の異形ですが」
「最下級の間違いだろ。こんな毛玉」
「あ! いけません!」
一刀は不用心に檻に近づくと、その檻を蹴飛ばした。
そして
「・・・ほぉ、結構遠慮のねぇ奴だな。おもしれぇ」
蹴りを入れた足が檻に触れた瞬間、足の一部が食い千切られた。
獣に噛まれたような跡ではなく、まるで人に噛まれた様なそんな跡が残っている。
「そのように不用意に近づかれますと無駄に傷を負うことになりますよ。どうぞ、此方の薬と包帯をお使いください」
「テメェ等が差し出す物を使う訳ねぇだろ。いいからさっさとコイツの説明を続けろ」
相変わらずの無礼な態度を取りながら、一刀は食い千切られた傷跡に意識を向けながらゆっくりと傷を再生させていった。
「力が使いこなせるようになりつつあると言う話は本当のようですね」
「お肉食べられちゃったのに、にょきにょき生えてくるなんて凄いわぁ~・・・・そのままにょきにょきと可愛らしい男の娘になって欲しいのだけど・・・」
「あれを見てどうやったら男の娘になれると思うのか疑問でしかありませんよ。普通逆でしょ」
「ぎゃく? 逆ってどういう意味?」
「どういうって・・・・女性に男性のアレがこう・・・にょきにょきと」
「きゃ~、天城ちゃんったら変態さ~ん。そっち系が好きなんて」
「そう言う意味で言ったのではないわよ!」
ここに常識人はいないのかと呆れながらも、こういう親であるため、ああいう可笑しな子供が生まれてくるのだろうと納得する一刀である。
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