第4話 宴会・・・後半?


「それで眞銀(ましろ)様はこんなところでお仕事もせずに何をしているのですか?」

「え、えっとね。楓。私だって戻ろうとしたのよ。だけどね。この人がダメだってね。放してくれなくてね。そのね。そのね・・・お仕事あるからダメだって言ったんだけどね。聞いてくれなくてね・・・しかたなく・・そのしかたなく・・・しかたなく・・・・・・」


 数十分後、腰に手を当てた黒髪ショートカットでとても可愛らしい巫女少女が現れ、元々いた白銀の巫女少女が叱りつけていた。

 黒髪のショートは別段珍しくはないが、片側だけ三つ編みにしているのはなかなかに斬新な髪型である。

 呼び鈴みたいだなとなんとも失礼なことを考えている青年であるが、口に出していないので怒られることはないだろう。


「しかたなくといいつつ、なんですかそのお菓子の山は。どうせ大好きなお菓子につられて、強く断れなくなっただけですよね?」

「うぐ!?」

「それともお菓子を持ち帰ったら私に没収されると思ってここで食べてしまおうと考えたのではないですか? ここには眞銀様の大好きな甘いジュースもいっぱいありますし、久しぶりに心行くまで甘味を堪能できると考えたのではないですか?」

「そ、そ、そそそそそんなことないよ? 楓の考えすぎだよ?」

「だったら何故眞銀様の周りにはチョコなどの甘いお菓子ばかり置かれているのですか? すぐそこにしょっぱいお菓子があるにもかかわらず、なぜか塩気のお菓子は手つかずのように見えますけれど?」

「・・・た・・・・」

「た?」

「・・・たまたまだと思います」


 白銀巫女少女改め、眞銀は視線を明後日の方へと向けながら、握り締めているチョコレートビスケットを口に運ぶ。


「眞銀様! もうお菓子は終わりです! いったいどれだけ食べるつもりですか!!」

「ま、まだちょっとしか食べてないよ! ホントだもん!」

「だもんじゃないです! 子供じゃないのですからそろそろ我慢を覚えてください!「・・・ん」あっ、どうも、大体眞銀様は普段からの糖分の摂取量が以上なのです! 私がどれだけ甘味を使わずにお身体に良い料理を研究しているかわかっていますか! 「・・・グイッと」えぇ、頂きます。ゴクゴクゴクゴクッ!」


 そして、青年は楓と呼ばれている巫女少女にお茶を手渡し、


「プハーッ!」

「・・はい、おかわり」

「ありがとうございます! いいですか! 眞銀様はもう少し私の苦労を知るべきなのです! 別に眞銀様のお世話が嫌と言う訳ではありませんし、眞銀様のために新たな料理を研究するのは嫌じゃないです。えぇ! 嫌ではありません! 嫌ではありませんがっ!! 眞銀様ご自身が気を付けて下さらないといくら私が気に掛けても意味がないのです!「高級店の煎餅」これは結構なモノを申し訳ありません。いただきます」


 まるで違和感なく楓を座らせ、宴会へと参加させていく青年。

 なんだか手慣れている感が否めない。


 というか、供物を食べきるまで帰れないと言う独自のルールを守る青年であるが、それでも墓場で一夜を過ごしたいとは思っていないようだ。

 故に供物を消費する人材は一人でも多いに越したことはないので、逃がさないと言う意志が読みとれるな。


「ねぇ楓。貴方まで一緒に食べだしたら誰が止めフムグッ!?」


 そしてそれを止めようとする者には、制裁と言わんばかりに大量の果物を口に突っ込まれることとなった。

 もはや誰にも邪魔されることなく楓が冷静になるまで宴会は続くこととなった。



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