第3話 宴会
パリポリパリポリッと軽快な音を響かせながら、青年は供えていた菓子を食べながら、墓石にぶっかけていた残りの日本酒を飲みしながら一人宴会を楽しんでいた。
捧げた供物はその場で飲み食いし、亡くなった先祖と共に楽しむべし、残すことはまかりならん、宴は供物が尽きるその時まで永遠に終わることはない。
と、そんな独自のルールを定めている為、青年は己が捧げた供物を無心に食べ続けた。
絶対一人では食べきれない量ではあるが、それでも食べきるまではこの墓から出て行くつもりはなかった。
そして、そんな決意のもと食べ続けている青年の横には赤くなった手をさすりながら涙目の巫女美少女がいた。
「す、少しは、気にしてくれても、いいんじゃないですか~」
相も変わらずなんの反応も返してくれない青年に涙目巫女美少女は口を尖らせながら問いかけるが、やはり青年は何の反応返すことは無く、ただ黙々と菓子や酒を食べ続けた。
「む~~~!」
青年の態度がやはり気に入らないのか、怒ったように頬を膨らませながら詰め寄ろうとしたが、美少女が詰め寄る前に青年はお供えしていた甘い菓子や甘いジュースを投げ渡す。
「えっ、くれるのですか?・・・・・あ、ありがとうございますっ!」
その程度で花のように満面の笑みを浮かべる。
あまりにちょろすぎる美少女に普通は呆れるものだが、青年は特に何の反応も見せず、ただ小さく頷くと、次々とお供え物を渡していった。
「わっ! やった!・・・はっ! ダメですよ! 流石にこんなには貰えませんよ! わわわわわっ!!」
両手いっぱいに積み上がっていく甘い菓子の山。
口ではダメだと言いながら、とても嬉しそうで、まるで宝物のように大事に抱え込んでいた。
そして、
「フムグッ!?」
手がふさがったかと思えば今度は口に果物を突っ込まれた。
それもバナナを突っ込まれ、ちょっと絵面的にアレではあるが、青年は別に狙ってやった訳ではない。
ただ、果物で口に突っ込むのに適しているのがバナナであっただけに過ぎない。
メロンを丸ごと口に突っ込むわけにもいくまい。
「ふぁいらふぁいふぁいらふぁい!」
何を言っているのかわからないが、やめろと言っていることは誰の目から見ても明らかであるが、青年が止めることはなく。
「・・・・・食え」
ぼそりと一言呟き美少女に命じると、自分も果物を食べ始めた。
「ふぃあむ?・・・・む~・・・もぐもぐ」
こちらの話を聞けよと言いたげの視線を美少女が送るも、全く聞く耳を持つ気が無さそうだ。
そもそも口の中を空っぽにしなければ、満足に話すこともできない、そう思い口を動かした。
「ん!? もぐもぐもぐごくん! なにこれおいしい!?」
「一本千円だか二千円だかの最高級のバナナだ。まだあるぞ」
「うえっ!? そ、そんなのいただけませふぐっ!?」
「・・・食え」
「ふぁへへふふぉ!」
「・・・食え」
「ふぁっふぇ」
「・・・食え」
「・・・ふぁい」
有無を言わさず青年は巫女美少女の口に食い物を突っ込んでいき、拒否することを許すことは無かった。
彼が何をしたいのか・・・まぁ、普通に考えて自分一人では食べられないので手伝ってもらう気なのだろうな。
食べ終えないと出ていけないマイルールがあるのだし。
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