第7話~新たな感情~



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「それでそれで!?もっと話を聞きたい!!」


興味津々で身を乗り出しながら、エンディはルナに話の続きを求めました。ルナはその反応に少しの高揚感を覚えながら、次はどの話をしようと、あれこれ悩み始めました。


「ルナ!そろそろ時間時間!」


すると青い鳥が、2人の顔と顔の間を遮るかの様に、飛び回り始めました。


「そうね……さすがにそろそろ戻らないと怒られてしまうわね」


「ホワイトに?」


エンディは、いきなり真顔になると、ルナの瞳を見つめて尋ねました。


「えぇ……」


ルナは少し困りながら、その凝視された視線に耐えられないという様に、くるりと背を向けました。


「じゃあ、またホワイトの許可が出たら来れる?ここは退屈で退屈で、頭がおかしくなりそうなんだ」


エンディは、背を向けたルナの前方に回り込むと更にルナの顔を覗き込んで懇願しました。


ルナはコクリと頷くと、俯いたまま、急かす青い鳥と一緒に、足早に帰っていきました。



宮殿の入口まで急いでたどり着いたルナは、息を整える為、聳立つ大きな柱にもたれかかると、大きな深呼吸をひとつしました。


ひんやりとしたその柱の温度が、ルナの身体のあらゆる熱を冷ましていくのがわかりました。


「胸が熱い……私、どうしたのかしら……」


ルナは両手を胸に当てて、遠くの森を見つめました。


この冷めない熱の正体がわからないただ、エンディとの時間は今までのどの時間よりも楽しかったそして、この戦の中で奮い続けなければならない、自分の使命。エンディとの時間の間だけは、忘れる事が出来た


「また、会いに行けるかしら……」


ルナは言葉に切ない想いを乗せながら、気づけばそう呟いていました。



β星はリゲル(皮膚が青色の宇宙人が住む星)


「申し上げます!β星とσ星の先日の戦争に於いて、回収された魂の装填は全て完了!我が星の爆発速度をかなり遅らせる事に成功したとの事にございます!」


沢山の家臣達が跪く中、1人の家臣が玉座に座るホワイトに向かってそう報告をすると、ホワイトは一言「うむ」という、短い返事をして目を閉じました。


家臣達はそれを合図に、また任務に戻るべく部屋を出て行き、その広い室内にはホワイトひとりだけが残りました。


すると、バタバタと羽音を響かせながら青い鳥がやってきたかと思うと、ホワイトの膝に舞い降り、そして嘴で膝を小刻みにつつき始めました。


「そんな事をせずとも起きておる。そして、ルナがエンディと会ってしまった事も、お前が言わずとも既に知っている」


するとその青い鳥は一回転したかと思うと、姿が変わり、膝の上には第1夫人のパキラが、ホワイトの膝に横向きに腰かけていたのでした。


「あなたは本当に、つまらない」


パキラはなまめかしく、長い右手の人差し指でホワイトの髭にそっと触れると、膝から降りて、そしてそのまま部屋を出ていってしまいました。


「先手を打たなければ……」


ホワイトは、思い詰める様に玉座から立ち上がると、宮殿の入口に向かって、歩き出したのでした。



「ルナ!帰ってきていたのね!」


マリアは跳ねる様に、ルナの姿を見つけると両手をひろげて、飛び付きました。


「おかえりなさい、またケンタウルス達と森でお喋りしてきたの?」


ルナとマリアの姿を優しく見つめながら、傍に居たアーシャがルナに尋ねました。


「えぇ、まぁ……ところで、パキラが何処にいるか知らないかしら?」


「パキラの姿は少し前から見かけないわ。きっと、ホワイトの所かも」


アーシャが問いに答えると、マリアはルナの身体に更にしがみつき、身体を左右に大きく揺らしました。


「パキラの事なんてどうでもいいじゃない!ね?一緒に遊びましょう??私、ルナと一緒に遊びたいの!!」


「マリア、あなたはまだ子供とはいえ、第4夫人なのよ?」


アーシャが呆れていると、


「どうでもいい?」


と、3人の背後から声がしました。


3人が振り返ると、そこには物音ひとつ立てずパキラが立っていて、3人の顔を順番にジロリと睨み付けたのでした。


「パキラごめんなさい……帰りがすっかり遅くなってしまって……」


ルナはそのパキラから向けられた視線に、萎縮しながらまずは謝りました。そして、パキラの周囲をそっと見渡しました。


「何を探してる?青い鳥もさっきちゃんと私の所へ戻ってきているし、話は全て聞いている」


「全て………?」


ルナは一瞬で顔を強ばらせると、その場に立ち尽くしました。勿論、青い鳥はパキラの鳥であるわけで、ルナの行動が全て筒抜けになる事。


それは、予測していた事ではあったけれど、ルナの心の中で、言葉には出来ない新たな感情が芽生え、そしてその感情が奪われてしまう事への恐怖心が芽生え始めていました。


「ホワイトも、知ってる??」


ルナは、顔を強ばらせながらパキラに尋ねました。


マリアとアーシャは、2人の間に流れるただならぬ重い空気に、心配そうに見守りながらも、ただただ黙っていました。


「ホワイトが知っていたら?」


「きっとホワイトは、外出の許可をくれないわ……」


ルナの目から、大粒の涙がポロポロと溢れ落ちました。そしてそれはルナにとっても、意外な事でありました。


「泣くほどそれが辛い事なら、私が協力してやってもいい」


「パキラ!本当!!?」


ルナは手で涙を拭うと、パキラの傍に駆け寄りました。


ルナより少し背の高いパキラは背を丸め、ルナの顔の位置に自分の顔を寄せて、ニッコリと微笑みかけると、ゆっくりとした口調でこう言いました。


「あぁ勿論。私はルナの味方だから」


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