第5話~エンディ~
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「少し休んだ方がいい」
ホワイトは床に崩れ落ちる様に座り込み、肩で息をし始めたルナに向かって、そう声をかけました。
「いえ、大丈夫です。あと少しだけ・・・」
「すまない・・そんな風におまえを生み出した、この私の事を恨んでいるか?」
肩で息をしながら、苦しそうに顔を歪めたルナは、ゆっくりとホワイトの方に顔を向けると、顔を左右に振りました。
「ホワイトが私に魂を与えてくれた事を、有難いと思っています」
「本当に?」
「勿論・・私にはこの場所がすべてだもの」
ホワイトはその言葉を聞き届けると、ルナの傍に歩み寄り、包み込む様に肩に手をかけながら、その場に立ち上がらせました。
「もうその辺で構わない」
「でも・・・」
「ルナが倒れてしまう方が一大事だからね。今から少し外へ行ってくるといい」
「でも、パキラ達が・・」
「私からちゃんと伝えておくから大丈夫。お前は外でケンタウルスやその他の種族達と過ごす方が、回復が早いからね」
「あ、有難う!!ホワイト!!」
ルナは嬉しそうに微笑むと、その部屋をあとにしまし
た。
*
「あぁ~退屈」
腰に白色の一枚布を巻き、くるくるとした茶色いウェーブのかかった髪の毛、彫りの深い顔立ちをした筋肉質の男性は、森の中に流れる小さな水流に裸足の両足を浸からせると、両手を挙げて、大きな伸びをひとつしました。
「少し眠ろうかな」
水流の傍らに一面に拡がる草花の緑色の絨毯。
男性はその上にごろりと豪快に寝転がると、水流に足を浸したまま、ゆっくりと瞼を閉じて、そしてそのまま眠ってしまいました。
*
「シャドー!!!シャドー!!」
ルナはケンタウルスの森に早速やってくると、仲良しのシャドの名を呼び続けました。
でも今日はそこにシャドの姿は無く、他のケンタウルス達の姿もありません。
「皆でどこか出かけてしまったのかしら。あの立派な足があれば、きっと遠くにもすぐに行けちゃうんでしょうから」
ルナが少しばかりの寂しさと、少しばかりの羨ましさを弄んでいると、森にパキラの青い鳥が飛んできて、ルナの肩に止まりました。
「パキラの青い鳥、私を呼び戻しても無駄よ?今日はホワイトに、ちゃんと許可を貰っているのだから」
ルナが少し強い口調で、肩の青い鳥に向かって告げると、青い鳥が言葉を奏で始めました。
「そんな事は知ってる知ってる。森の奥に行ってみたらどうかなどうかな。行った事ないんでしょう?ないんでしょう?」
ルナは予想外な言葉に戸惑いながら、森の奥の方角に視線を向けました。
何度となく、この森にはやってきてはケンタウルス達と過ごしてはきたものの、森の奥には確かに行った事がありませんでした。
「行った事はないけど、シャド達がいる時に一緒に行く事にするわ。迷子になってしまったら、それこそホワイトに迷惑をかけてしまうもの」
ルナがそう言って、宮殿へ帰ろうとすると、青い鳥は行く手を遮る様に、縦横無尽に空間を飛び回り始めました。
「待って待って!少しだけ少しだけ!」
ルナは困った顔をして立ち止まり、大きくため息をつきました。
「確かにホワイトが折角許してくれたのに、すぐ戻るのも勿体ないかもしれない。じゃあ少しだけ探検に行ってみようかしら」
ルナはそう言うと、方向転換し森の奥へと歩みを進め始めたのでした。
*
「あぁよく寝た」
筋肉質の男性は、くるくるのその髪の毛を無造作に搔きあげると、今度は水流から足を出して、水滴を両手で拭い始めました。
「人の足があるって変な感じだな。まだまだ慣れないや」
男性は不思議そうに自分の足を再度見つめた後、また緑色の絨毯に、仰向けでごろりと寝転がりました。
すると何処から飛んできたのか、青い鳥が羽ばたいてきたかと思うと、男性のくるくるの髪の毛に埋もれる様に止まりました。
「うわ、な、何??お前一体何処から飛んできたの?」
男性は慌てながらも、突然の来訪者を歓迎するかの様に、嬉しそうにそう語りかけました。
「ご、ごめんなさい・・うちの鳥さんがご迷惑を」
男性が声のする方に目をやると、金髪のロングヘア長いドレスを来た女性が、樹木の枝をくぐり抜ける様にこちらに向かってくる所でした。
「あんた誰?」
男性は怪訝な顔で、そう尋ねました。
「私はルナ・・・ホワイトの第5夫人」
「ふ~ん。ホワイトの夫人のひとりか。で?夫人様がこんな森の奥まで来ちゃって何してるの?ここがどんな場所かちゃんとわかってる?」
「森はもうずっと私は来ているわ。こんな奥まで来た事はなかったけれど。それに、あなたこそ誰なの?ここはケンタウルス達の森のはず。男性の人ならば、宮殿で任務に就いてないとおかしいわ」
すると男性は、その場に起き上がると胡座をかいて、ルナに呆れ顔を向けました。
「第5夫人は何も知らないんだな」
男性はそう言い放つと、今度はゆっくりと自分の2本の足でその場に立ち上がりました。
「俺の名前は、エンディ。ケンタウルスだった存在で、改良されて今は人になった。ここはそんな存在が拒絶反応を起こさないか、暫く様子を見るテリトリーなんだ。初耳だった?第5夫人さん?」
ルナは突然のその言葉に、困惑を隠しきれないまま、エンディの顔を見つめ続けたのでした。
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