第十一章~書きかけの手紙
・・・いつの間にか、眠ってしまっていた。
目覚めると、窓の外は朝だった。
ハッとして、我に返る。
日記はパタンと閉じられてはあったが、枕の傍に無防備に放り出されていた。
下段を覗くと、まどかはまだ眠っていた。
ホッとして、ひとまずあたしは日記帳に鍵を掛けようとしたんだけれど・・・
その時、最後の方の頁から白い紙の様なモノがはみ出しているのに気が付いた。
(ん?)
あたしは、無意識にそれを引っ張り出した。
(・・・便箋?)
四つ折りにされたそれを開くと、淡いブルー地に濃い青色の罫線が横に引かれてある便箋だった。そこに藍色のペンで文字が書かれてあるので最初は判らなかったが・・・その淡いブルー地はどうも空の様で、所々が白かった。きっと、雲だろう。
【 一条君へ
お久し振りです。
元気にしてますか?
高3の時に同じクラスだった園田です
・・・もしかして、もう忘れちゃってたりするかな?
一条君は、確か、九州の大学に進学だったよね?
大学生活はどうですか?楽しんでますか?
バスケは続けてるのかな?
質問ばかりでごめんなさい。
一条君は私の事を憶えていないかもだけど・・・
実は、1ヶ月後、手術が決まりました。
成功率は50%だそうです。
だから、手紙を書きました。
夏休みはこっちに帰って来るよね?
その時、会ってもらえないかな?
できれば高校の
】
その手紙は勿論一条君宛てで、書きかけで止まっていた。
そして、この短い文章の中にはとんでもない事が書かれてある。
あまりにもあっさりと書かれてあるので、危うく読み逃しそうになる。
【成功率は50%】
いや、もうこれ、この手紙を貰った一条君、ビビるでしょ…
寧ろ、この手紙が渡されてなくてよかった・・・とすら思ってしまうあたしが、そこにはいた。
非情かも知れないけれども。
そして、見逃せない部分がもう一ヶ所ある。
【できれば高校の・・・】
この続きは、きっと、待ち合わせ場所に違いなかった。
(花野子さんは、一条君をどこに呼び出したかったんだろう・・・)
枕元の時計を見ると、午前六時四十二分を指していた。
あたしは、その淡いブルーの便箋を元通り四つ折りにして、手帳の真ん中辺りに挟み込んだ。
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