第十章~乙女心、恋心

(えーーーーーっ!

 なになになに~~~~~っ!

 一条君?!

 花野子さんの好きな人?!)


 予想外の展開に大声を上げたいのを押し殺し、あたしは心臓をバクバクさせた。


「一条君」。

 苗字から、もう既にカッコいい感じが漏れ出ている。

 透明感のある、華奢でしなやかな花野子さんが好きになった人。

 絶対に素敵に決まってる!


 それからのあたしはもう罪悪など感じる余裕もなく、只ただ好奇心の赴くままにその頁を捲った。



【3月14日(土) 雨


 やっぱりバレンタインのお返しはもらえなかった。

 ちょっとだけ期待してたんだけどな・・・

 期待した分、悲しさが倍増。

 お姉ちゃんは彼氏とデートみたい。いいな。】


(花野子さん、ちゃんと気持ちは伝えてたんだ!

 よかった!

 でも、チョコのお返しはなかったんだね・・・

 てか、母さん、ホワイトデーに父さんとデートしてたんだ・・・ウケる笑)



【3月24日(火) 晴

 

 今日は一美が遊びに来てくれた。

 けど、すごく悲しい日にもなっちゃった・・・週末、お引っ越しなんだって。

 一美はこれからの京都での生活の事、とても楽しそうに話してくれた。

 笑いながら聞いてたけど、本当はすごくすごく淋しかったよ。

 だけど、ちゃんと「頑張ってね」って伝えられたよ・・・偉かったぞ、花野子っ!】


(花野子さん、一美さんとはきっと親友だったんだね。

 一美さんは、進学かな?就職かな?

 ところで、花野子さんはこれからどうするんだろう・・・?)



【4月1日(水) 曇


 一条君、嘘でもいいから「好きだ」って言ってくれないかなぁ・・・】


(エイプリルフール、ね。

 そうだよね・・・うんうん、そうだよね・・・

 その言葉があれば色んな事、頑張れるのにね・・・)


 って・・・ヤバいっ、あたし。

 完全に感情移入してしまって・・・頁を捲る手が止まんない・・・

 これから寝なきゃ・・・なんだけど・・・

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