第7話
「だいち、きっと、いい子で……」
病室のベットの上で、母さんが息を切らしながら僕に最後の言葉を残した。周りに立っていたお医者さん、看護師さん、そして何より父さんは涙を流しながらそれを眺めていた。
僕は母さんの手を取り、幼いながらも、目の前で起きていることを理解していた。今、僕を生んでくれた人は死んだんだ。もう、二度と会えない。
その日を機に、僕たち家族の暮らしは激変した。父さんと二人だけになり、貧相な家で、どうにかぎりぎりの生活を送っていた。
けど、僕は父さんのことは大好きだった。この世で唯一、僕を愛してくれる人として………
「お前、きもい」
「ちょっとさあ、男ならもっとはきはきしてくれん? 」
「死ね」
学校、外の世界ではいつもこれだった。みんな僕のどこがそんなに憎いのか知らないけど、たいてい、僕は同じ扱いをうけた。
嫌われて、煙たがられて、バカにされて。
何度泣いても、この状況は変わらないし、終わらない。結局、父さんだけが頼りだった。
けど、それすらも、中学校に入ったら失われた。
当然、僕はそこでも嫌われて、いじめも前よりより狡猾に、より苦しくなった。いよいよお金を取られたり、怖い人たちが出てきて、集団で殴られることもあった。
「おら、金もっとよこせ! 」
「なあ、親友のだいちくん? 分かってんだろ? 」
でもそれだけなら別にいい。いろんな人に同じことをされてきた僕には、いくらひどくなっても、精神がさらに崩れることはない。
むしろ、それだけならまだよかった。
そのあたりから、今度は父さんすらもが僕に暴力をふるうようになったんだ。
「消えろ」と邪魔者を見る目で。
そしてある日、家の中に、父さんの姿は消えていた。「もう、お前を育てることはできない」とだけ紙に残して。
「死にたい」
それで僕は、自ら命を……
じゃあ、今、この瞬間の僕は、すでに。
あの世に……
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