第4話
「だいちくん! 大丈夫でしたか? 」
姿を消したたつやさんに驚いて、頭の中が真っ白になっていた僕にメトラさんがこう言いながら近づいてきた。初めて会ってから少ししか経ってないのに、知ってる人というだけで、安心感が異常だった。
メトラさんも別に信用できる人じゃないのに。
「あの、い、いま、人が……」
とか思いつつも、僕は目の前で起こった怪奇を、彼女に訴えていた。そう、完全に頼ってしまっている。
「人が? あ、もしかして―」
ーバンー
彼女がそう言いかけた時、この車両に来てから、一発目の大きな揺れが来た。でも、前の車両で感じたほど恐怖はない。だって、その揺れの根源が目の前で暴れてるんだから。
「年上だからって舐めやがって。絶対許さねえぞ! 」
「ああ? 俺が使い捨てだと? 」
「ちょっと、浮気したのはあんたでしょ? 」
それにしても、悲しみの車両、ってだけで、こんなにやばくなるの? というか、たつやさんの時もだけど、みんな言ってることが身近……
「あっ! 」
突然、僕は思い立ったように声を上げた。
「どうしました? 」
「ちょっと、気になることが」
そういって、僕は前の方を指さした。案の定、指の先では、ひとりの男の子が、複数の大人に殴られていた。
「………なるほど。お助けしたいのですね! 了解しました! 」
「えっ? 」
嫌な予感がすると、その通り、メトラさんは念力を使って、僕を無理やり立ち上がらせた。そして、男の子の方に向かって、ゆっくりと歩き出した。当然、僕は彼女の後ろについていくしかない。
なんせ、彼女が念力を駆使しているときは、自由に身動き不可。
あちこちで暴力が蔓延してる中、メトラさんはその真ん中を堂々と進んでいった。その後ろで、僕はびくびくしながら歩かされていた。
途中で、何度か暴れてる人にぶつかられそうなときがあった、けど。そういうときは、メトラさんがあの念力を使ってその人たちを吹き飛ばし、次々と倒していく。
「邪魔だ! え、なに? う、うわー! 」
「か、体が浮いて、ギャー! 」
もう、考えるのやめようかな。
男の子のもとに着くころには、もうとっくに彼を囲んでた大人は逃げ出していた。
「はい。だいちくんの目標に到着です。」とメトラさんが笑顔で言った。
「あ、ありがとうございます」
そういって、僕は膝を折り曲げて男の子に近づいた。
「お知り合いですか? 」
「いえ、違います。ただ」
「ただ? 」
「ちょっと、シンパシー感じちゃって」
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