「中庭」におそわれた!
校舎3階から中庭を見ていた。
ウッドデッキテラスと、プールサイドに使われているような緑色の床。
非常に整備されている。
と、そのとき、ぼくの魂が遊離した!
なんだろう、中庭の床に乗り移った感覚。しかし、身体はまだ校舎3階の窓際にいて、ぼくは中庭の床を見ている。意識が2つに分離しているように思えて思考としては統合されていた。
中庭に女子学生3人ほどが現れた。
「ねえ、ここらへんで敷物しいて食べよう」
「そうだね」
ぼくは3階から眺めていた。しかし、感覚としては、明らかに女子学生3人に踏まれている。
彼女らはお弁当を広げている。ああうまそうだ。昼過ぎだがまだ次の授業はやらないのだろうか?
そんなことを考えていると、なんと、中庭がひっくり返った!
彼女たちはなにも叫ぶことなく暗闇へと落ちていった。
中庭に連動して、ぼくは廊下にドサッと前から倒れた。地面をとっさに押し返すための手や腕はあまり出なかった。
「おーい」
声をかけてくれたのは、隣のクラスのケンタ君だった。気がつくと、保健室のベッドで寝ていた。
「どうしたんだよ?なんか廊下で倒れてたから」
「ああ、いやべつに」べつになんて事態ではないが、そうしてやりすごすしかない。誰にどう説明したって「は?」としかならない。
「おうわかった。じゃ、気をつけて帰って」
「うん」
「あと保健室の鍵閉めといて」
「え?」
「え、じゃないだろ。こっちは無断で保健室開けてんだから」
「鍵どこ?」
「どこって言われても、うーんたしかに」
「どうやって入ったのさ?」
「ああもう開いてたよ」
いや、開いてたって言われても…
「んじゃ、先帰るわ」
「はあ」
ぼくは上半身だけ起こしたまま呆然としていた。そいえば中庭はどうなった?
急いで保健室を出ようとした。けど、足が重い。どうなってるんだ…?
なんと、足に先ほどの女子学生3人が絡みついているではないか!
おいおい、どうなっている…
女子学生らは通常の身体の2分の1ほどの太さになって、いろんなところが裂けて紐のようになって絡み合っている。
どうやってほどく?というか授業は?先生は?
もうわけがわからない。
外は夕方だ。もう帰ろう。ひとまず近くにあったエアコンのリモコンで「除湿」ボタンを押すと、女子学生らはほどかれてヘビのようになって廊下へと這って行った。
足を外へと踏み出したとたん、ぼくの視線が空へと向けられていた。ああ、ぼくは中庭になったんだね。
右斜め上を見ると、さきほどぼくの足にからまっていた女子生徒3人がこちらを見下ろしていた。
後日、中庭は壊されて新しくされることになった。ぼくの意識は地面の四方八方へと散らばり、ぼくの上には別の中庭が敷かれていた。あたりは真っ暗だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます