「レシート」におそわれた!

 さて、買うものかったし、出るか。


 ビニール袋に買ったものを詰めてスーパーの出口へ行く途中、店員さんがレシートの紙を交換しているところだった。


 あー、こんなふうにしてレシートの紙って丸まってるんだな、と思いつつじっと眺めていた。


 すると、店員にセットされたはずのレシートが飛び出してきた!

 そして、くるくると回転しながら、ぼくの口に挟まってきた。


「あがっ!」


 わたしの上と下の前歯にレシートとして印字されるはずのロール状の紙がはさまった。


 すると、ロール状の紙が急回転を始めた。


「あがががががががっっっ!!」


 そして、猛烈なスピードでレシートに文字が印刷されはじめた。ロール紙からは印刷されたレシートが連なって出てくる。


 いったいなにが…?


 同時に、ぼくの頭の中がスルスルと軽くなっていくのを感じた。


 床には連なったレシートがへびがとぐろを巻くようにして積み上がっていた。

 30秒ほどでレシートはすべて印字され、ぼくの口からロールの芯がぽろりと落ちた。


 床に落ちた連なったレシートを見てみると、ぼくがいつなにを食べただとか、ぼくの住所だとか、ぼくがどういった性格だとか書かれていた。


 そうか、これがぼくなのか。ぼくは、有限の印字でしかなかったんだ。

 そうおもうとどこか寂しくも感じたが、まあぼくなんてそんなものさとどこかふっきれた想いにもなっていた。


 ぼくはレシートを体にぐるぐると巻きつけてウキウキした気分で帰宅した。


 朝起きると、ぼくは誰なのか、そしてぼくがなぜここにいるのか分からなくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る