「ほうれん草」におそわれた!

 午前2時40分。それはある日突然に起きた。

 ぼくは外で散歩をしていた。すると、向こうのほうからメラメラと燃えたような何かがこちらに5から6の量で空を飛んでやってきた。まるで小型飛行船だ。

 しかしよく見てみると、それは真っ赤に燃えたほうれん草だった!

 ぼくの上斜め前100メートルくらいまで―高さだと電柱くらい―来ると、いっきにこちらをめがけてやってきた。

 やばい、逃げなければ!しかしもはや時間など残されていなかった。

 ぼくは近くにあったマントでひらりと避けた。ほうれん草は地面に激突し、ガラスが割れるようにして砕け散った。

 しかし、ほうれん草はまだいる。たくさんいる。赤く燃え上がる空一面。すべてはほうれん草の空襲だ。これを全部回避することは不可能だ。

 家に猛ダッシュした。はやく、はやく家に帰って寝たい。

 しかし、だめだった。玄関を開けるとぎっしりとほうれん草が詰まっていた。

 直ちに玄関からほうれん草がぼくへと流れ込んできて、ぼくは倒された。そしてさらなるほうれん草がぼくに覆いかぶさり、ぼくは暗闇に飲み込まれた。

 起きると、ぼくは旅館でほうれん草のおひたしになっていた。

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