「玉入れ」におそわれた!
近所の小学校で運動会が行われていたので、見に行った。
玉入れが行われていた。
玉入れを見ていると、玉入れにおそわれた。
ぼくは玉入れのカゴの中に入った。
しかし、誰もぼくを人だとは思わず、玉として扱われた。
まってくれ、ぼくは玉じゃないんだ!
さけんだ。
無駄だった。
競技は終了した。
玉のカウントがはじまった。
1!2!3!4!
審査員の号令とともに玉入れから玉がグラウンド上に1つずつ放出される。
19!
審査員がさけび、私は玉入れから他の玉と同じようにしてグラウンド上に放り出された。
ドサッ
いっいってて・・・
ぼくは運動場に転ぶようにして倒れた。
誰もぼくに気づいていない。
え?ぼくは人の形をしているのだぞ。玉と違う。
そうこうしているうちに玉入れは終了。玉はかき集められた。
ぼくも他の玉とおなじくしてカゴの中に入る。
「ねえ田中先生、この玉、少し大きくないですか?」
「そうだね。でもまあそのまま倉庫にしまおうか。」
ぼくは他の玉と同じようにしてかごに入れられ、倉庫にそのまま入れられた。
ガチャと鍵が閉められ、ぼくは暗い倉庫の中を過ごした。
「ねえ、あの玉、なんか変だよね?」
「ぼくもそう思う」
玉がひそひそと話している。
「あの玉を追い出してあげないか?きっとここに入るべきではなかったんだよ」
「そうだよね、そうしよう」
どうやらぼくを助けてくれるようだ。
「でもどうやって出せば良いんだろう?」
「超流動になればいいんじゃないかな?液体ヘリウムは絶対零度付近で壁をよじ登ることができるから、それを応用するのさ」
「じゃあぼくたちは冷えればいいの?」
「そう!」
「じゃあヒエヒエマンを呼ぼう、おーいヒエヒエマーン!」
そんな都合よくヒエヒエマンなんて居るもんじゃないだろ。と、つぶやきそうになったのを我慢していると、ヒエヒエマンが現れた。
「わたしを呼んだか?」
「ヒエヒエマン、おつかれっす!さっそく絶対零度付近にまでぼくたちを冷やしてください、おねがいします!」
「よかろう」
もうだめだ。限界だった。
「そんな都合よくヒエヒエマンなんていないでしょどう考えても!」
言ってしまった。
しかしこれがだめだった。
周りがしらけたのが分かる。
「ヒエヒエマン!こいつ、悪いやつです!処罰おねがいします!」
「よかろう。ハァーーッッッッ!!!」
みるみるうちにぼくは玉入れのカゴにされてしまった。
ぼくはずっと倉庫に玉入れのカゴとして眠ることになった。
翌年、運動会では赤と白のカゴに加えてぼくも立っていたのだが、誰もぼくのことを気にしてはいなかった。ましてや玉なんて誰一人としてぼくに入れはしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます