「輪廻転生」におそわれた!

「よおタイチ!オレ様の名は『輪廻転生』だ!もしよかったら「あの世」というものやらをみせてやるぜぇー」

 いきなりぼくの目の前に立って、金髪ツンツン頭の黒サングラスをかけた男が声をかけてきた。

 うわー、めんどくせ。

「それじゃあ、一回だけ」

「おーっとそんなことはできないぜ旦那ぁ!なんといっても輪廻転生は永遠に繰り返される生き様を体験しなきゃならねえからなあ」

「じゃあお断りしておきます。ぼく今から友達の家いくので」

「いいのかーい?じつは俺様、未来が見えるんだぜ。今からキミは橋の上から突き落とされて溺死する」

「な、なんでそんなことわかるんですか!?縁起でもない。」

「イヤーだからオレ様はさ、分かっちゃうんだって未来がさ、ミ・ラ・イ・が!」

 こいつの言ってることを信頼して良いのかどうかわからない。

「ひとまず、実演してみてくれませんか?」

「じつえーん!?あんたがこの箱に入ってくれないと永遠なる人生は見れないなぁ~」

 手にはやしげな箱をぷらぷらさせて男はぼくをあおり立てる。

「それでは、あなたは何回人生をやりなおしたのでしょうか?輪廻転生そのものなら、もう何回も人生を」

「それはないなぁぼっちゃん!ぼくは輪廻転生そのものだからこそ、永続的なんだよなあ」

「とにかく、信じることが出来ません。あながたが永遠に繰り返す人生をわたしにくれるとは思えないのです。」

「うーんいいのかぁい?キミはこのままだと死んじゃうよぉ~?」

 どうしよう、どうしたらいいのだろう。

 おどおどしていると、うしろから怒鳴り声が聞こえた。

「あんた!なにしてんのよ!」

「しょ、諸行無常ねえちゃん…!」

 なんかいきなり女が現れた。はやくこっちとしては友達の家に行きたいのだが。

 あろうことか、ぼくの前で男は女にいきなりとびかかるようにしてハグをしはじめた。

「ね、ねーちゃん!世界一好きだよね、ね、ねーちゃん!!だーいすきーーっ!!」

「なにいってんのよ。もうずっと探してたんだからね、もう…。このっ、バカバカバカバカバカッ!」

「うわーーん!ごめんよねーちゃんごめんよごめんよごめんよひぇーん」

 呆然と立ち尽くす。輪廻転生と諸行無常がハグしている。ぼくはどうしたらいいのだろう?

「そこのあんた、なにしてんのよ?」

 女がハグしたままぼくに話しかけてきた。

「えっと、友達の家に」

「ああ、この先の家、あんたの友達の家だったの?さっきあたし、友達殺したわよ」

「な、なんてことするんですか!?ぼくの友達なのに。」

「しったこっちゃないわ。諸行無常でしょ、この世の中?あんたが信じている存在なんてそんなもんよ。いつまでもずっと友達が生きてるだなんて、信じているほうがおかしいとおもうけど?」

「何言ってるんですか!?人殺しですよ、あんたのしたことは!?」

「人?ああ、あんたは人だとおもってるのね。わたしはそこらへんの亀とかアリと同じ扱いなんだわ、ごめんな」

 発狂しそうになる。どうしたら良いのか。ひとまず、ハグする男女を避けて友達の家に向かう。

 輪廻転生と名乗っていた男がボソッとつぶやく。

「あーあ、そっち行ったら橋から落ちるってのによ」

 突然車が現れる。

「今日のラッキカラーは~デケデケデケデンっ、黒~!」

 ぼくは大砲をもろにくらって橋から落ちた。

 ああ、もうこれで終わりか。

「待てぇぇぇぇぇっっっ!!」

 上から輪廻転生男がふってきた。

 ぼくの目の前が真っ暗になった。


 気づいたら芝生の上で寝転んでいた。

「どうよ?輪廻転生っつーのはさ?」

 横には輪廻転生男が体育座りしてこっちを見ていた。

「えーっと、ぼくは」

「輪廻転生したのさ」

「はぁ」

「さ、新しい人生の始まりさ。立てるか?」

 立つもなにも、立たないとなにも始まらない。

 ぼくは今日から新たな人生を始めることになった。

「ところで、諸行無常お姉さんはどうなりましたか?」

「ああ、あいつ殺したよ。諸行無常そのものなんだからおめえも消えろよってな」

 ぼくは輪廻転生男が好きになった。


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