「葛根湯」におそわれた!

私は薬局を歩いていた。

ふと、「葛根湯」というラベルが目に入った。

葛根湯か。

たしか風邪に効くので有名な薬品なんじゃなかったっけか。

じっと眺めていると、箱の中から「カタカタカタ」と音が聞こえてきた。

なんだ、近ごろの薬は自分からご主人様のところに口に入るように設計されているのか、と関心した。

しかし、これはとんだ間違いだったのだ。

箱の中から葛根湯が飛び出してきて、なんとわたしを飲み込んでしまったのだ!

気がつくと、わたしは瓶の中に閉じ込められていた。

私はどうやら葛根湯になってしまったらしい。

葛根湯としてどのように振る舞えば良いのだろうか。。。


おじいさんとおばあさんが私を見ている。

「おじいさん、これ飲んで風邪なおしましょ」

「おおそうじゃの」

おばあさんは私が入った箱を持ち上げ、そのままレジへと向かって購入した。

おじいさんはその買った葛根湯を飲み干した。

ああ、私はいまからおじいさんのために風邪を治さないといけないのか。。。

しかし、よくわからない。どうすればいいのか。

ひとまずパンチをしてみた

「グハッ…!!」

「どうしたじいさんや?」

「なんか、ワシの身体から痛みを感じる」

「ええ!?ど、どうしたらいいんじゃ」

外ではおじいさんとおばあさんが混乱している。

パンチでは治らないらしい。私はどうすればいいのかわからない。私はおじいさんの身体のあちこちに運ばれている。意識が朦朧としてきた。わたしは最後の力をふりしぼり、血管中の赤血球をツンツンしてみた

「あああっ」

「じいさん、今度は一体?」

「なんかくすぐったいんじゃ、とくに二の腕が」

「ああそうじゃじいさん、枕カバーが安いんじゃ。買いに行きましょ」

「おお、そうじゃの」

ひとまずツンツンすることは良いのかもしれない。

私は、そばに居たマクロファージにもツンツンしてみた。

「ほにゅっ!」

「じいさん今度はいったい」

「ほにゅほにゅしてきたぞ」

「じいさん、ほにゅほにゅとは一体どんなことになっているだい?」

「身がほぐれてきたのじゃ」

わたしはおじいさんの中にいるからよくわからないけど、外では叫び声が聞こえる。

どうやらおじいさんは溶けてきたらしい。

ああ、治す前にあの世におじいさんをおくってしまったみたいだ。

おじいさんは地面に液状に広がり、蒸発し始めた。

おばあさんは膝を地面について泣いていた。

わたしはおじいさんを横で見ながらその場を後にした。

もう葛根湯にはなりたくない。

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