第460話 魔境

市内にイオンはない。

鉄道の駅はあるが、一時間一本ほどしか走らない。

タクシーは駅周辺にしかいない。電話で呼ぶしかない。

それも24時間は営業していない。

路線バスは、うちの付近は廃線になった。


小学校はいずれ市内で1つだけに統合されそう。

子どもたちの母校はまだ生き残っているが風前の灯火。


土日に行く場所がイオンくらいしかないところが「田舎」だという。

うちのような場所は「魔境」らしい。


死にかけたら救急車は間に合わないだろうし、信頼できる総合病院がない。

夜間外来にかけこめない。


コンビニができて多少は便利になった気もしたが、スーパーの数が減ったからなあ。

ちなみに歩いて行ける距離には、食べ物を売っている店舗はない。

小学校区内には、コンビニもないし、スーパーもない。


ちょっと中学あたりでグレかけても、夜集まるような場所もないから、グレられない。

外で集まっていたらすぐバレるし、クマや猪が出たら命の危険がある。


うっかり出かけていて雨に降られたら、干していた洗濯物が取り込まれているなんてことも実際にある。

うちは鍵を開けてはいかないが、「開けておいた方がいいよ」みたいなことは言われた。


以前は、玄関の鍵が締まっていると、宅配便は怒って帰った。

玄関チャイムは昔の人ほど鳴らさない。

いきなりドアをガチャガチャする。


やっぱり魔境なのかな。

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