第160話 声
勝ったからではないが、WBCのメキシコ戦は素晴らしい試合だったと思う。
最後まであきらめない、最後まで何があるかわからないということがよくわかる試合だった。
アメリカと頂上対決になったのも、ドラマチック。
こういう国際大会というのは、見ている人たちも気合が入りまくって、テレビ観戦していても大きな声がつい出てしまうことと思う。
うちはラグビーや野球やソフトボールで盛り上がる。
サッカーはちょっとわからないから、見るには見るが選手もポジションも覚えられない。
盛り上がって、大きな声で喜んだりすると、街では迷惑だろう。
ここは田舎なので、夜でも早朝でも大丈夫。
時差がある五輪なんかでも日中と同じように声を出す。
叫んだり鳴り物を使ったりはしないから、迷惑にはならない。
さすがに窓を全開にして大声を出したりすれば、苦情がくるかもしれないが、家の中でやや大きい声くらいなら平気。
そんな田舎基準で生きている私だが、ある晩、事件が起きた。
トイレに入っても、お風呂に入っても、なぜか外から歌声が聞こえてくる。
誰かがお風呂で歌っているのか?と思ったのだが、数時間聞こえた。
お風呂ではなかろう。
ラジオやテレビの音ではなく、音程の合っていない男性の歌声。
元の歌が何なのかJ-POPに詳しくない私にはわからなかったが、近所の人情報によると「〇〇(J-POP)の歌っぽかったけど、すごく下手」だそうで、一体どこで何のために?という疑問が。
歌が聞こえてくる方向、住人の性別年齢などから、もしかして?と思う人がいたが、
「そんな何時間も外で大声で歌う?」という疑問が新たに出てきた。
家の中で大声で歌っているのなら、うちまで聞こえてくることはなさそうだから、やはり外で大声を張り上げていると考える方が自然。
でもね、田舎の真っ暗な夜に外に出て、一人で歌う?酔っぱらってたとしても、そんな長時間歌えないでしょう。
「なんかヤバイのは確かなので、見て見ぬふりしましょう。」
そういうことになった。
うちよりもそこに近い方がクレームを入れたのか、しばらくは歌うのはなくなったようだが、今でも思い出したように夜中に歌声が聞こえてくることがある。
誰だかわからないというのも怖いが、誰かわかっていても怖いというお話。
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