第138話 311

2011年(平成23年)3月11日金曜、私は家でPCに向かって仕事をしていた。


金曜に貰った仕事は、土日に持ち越さずに金曜のうちに仕上げておこうとして、その時間はかなり集中していたと思う。

土日は、子どもの部活の送り迎えがあったから。


手元の資料を見ながら考え、キーボードを叩いていると、遠くから地響きみたいな音がして揺れだした。

机の端をギュッと握って、そのまま揺れが収まるまで椅子に座っていた。


揺れが収まってから仕事を仕上げて、さっきの地震はどこが震源地なのかなとネットニュースを見ると東北だとわかり「そんな遠い場所なのに、ここも揺れるの?」と驚く。

そして、テレビをつけると大地震がおきたこと、かなりの広範囲で大津波発生の危険性があることなどがわかった。

津波が押し寄せてくる映像はどの時点見たのか覚えていないが、まさか日本でこんなことが起こるなんて思っていなかった。


日本地図がどのチャンネルの番組でも大きく脇に出ていて、津波警報や津波注意報がパッと見てわかるようになっていたのも、大人なのに怖かった。

津波の到着予定時刻や予測される高さの一覧も。


あの年の卒業式や入学式は、遠く離れたこの地でも答辞や送辞や祝辞などで震災について語られて、黙祷をした。

黙祷をしながら、我が子と同じ年代の子どもたちが亡くなったり、居場所を失ったり、辛い思いをしているのだろうと思うと、胸がきゅっとした。


あの時、全国各地で被災地を応援するべく、支援金を送ったり、物資を送ったりしていたのを覚えている人は多いと思う。

この田舎の学校でもそういうことを思いつく人がいて、学校の不要物、それも元々は他所から譲ってもらった中古の物を被災地の学校に送ることになったそうな。

これはなんと美談に仕立てたニュースにもなった。


何かを送るのなら、もう使えるかわからない中古の物ではなくて、きちんと新品を募金で購入して送るか、それくらいの支援金を直接送るかの方が向こうもありがたいのがわからないのか。

学校の先生も思いついた生徒も、関係者はみんなバカなのか。


そんな話がたくさん被災地ではあったのかなと思うと、気の毒だ。

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