第137話 引っ越し

一度、夫の転勤で引っ越して、また転勤でこの田舎に舞い戻ってきた時のお話。


引っ越しが土曜日で、確実に高速道路が混雑するのがわかっていたので、うちの車は一番近くのインターまでのらずに途中のインターで降りて下道を使って到着した。


「荷物が届くまですることがないから、みんなで何もない場所で昼寝するか」と

家族全員でごろごろしていた。

部屋はその前の週にやってきて、掃除などは済ませておいたのだった。


待てど暮らせどトラックが到着しない。

多分、一番近くのインターまで高速道路を走って、渋滞に捕まっているのだろう。


到着予定時刻をかなり過ぎてから、引っ越し業者さんのトラックが到着した。

きびきびと荷物を運び入れて、帰っていった。



到着が予定時刻付近であれば、当日にある程度片づけができたのだけれど、さすがに遅かったから、最低限の荷ほどきしかできず、近くのスーパーでお弁当なんかを買い込んで食べようとしていると、玄関チャイムが鳴らされた。


自治会長さんでも確認にきたのかな?なんて思っていたら、かなり高齢のNHKの訪問員。


既に引っ越し後の手続きが済んでいたはずなのだが、玄関先で怒鳴る。

「払ってもらわないと困るんですよ」とかなんとか。


「手続きは済んでいますから、あなたには用はないです。お帰りを。」

(比較的)若い女に言い返されたのにカチンときたのか、しばらく聞き取れない文句を言っていたなあ。


全然こちらの話を聞く気がなかったし、はなからこれまで払っていない人扱いだったけれど、前に住んでいた時もしっかり衛星の契約してたのにな。

何を根拠にあんなに怒鳴ったのやら。


引っ越しトラックを見た近所の人がこの人に連絡を入れて、契約させようと思ったのだろう。

引っ越し当日だよ?

テレビがあるかないかもわからないし、転居の手続きしてる可能性とかも考えない?


そうだ。確か契約書を持ってきていて、これに書け書けとうるさかった。

年貢取り立ての悪い役人みたいだったよ。


それから、新聞屋さんも来るのが早かった。

勝手に入れていって、取らないから辞めてくれと言ってもしつこいところもあった。

こういうのも近所の人が情報を流しているのだと思う。

根負けしてその新聞を取る人がいるのだろう。

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