第129話 謎のカヌレ型

田舎に住んでいるせいか、人よりも食い意地が張っている私だ。

すぐ手に入らない、見かけないとなると、気になって気になって仕方なくなる。


かなり昔にカヌレが流行ったことがあった。

今調べてみたら、1995年だったようだ。


この時に食べてみたかったのだが、それどころじゃない状況であったので、買い求めることができなかった。

流行が終わってしまうとカヌレをすっかり見かけなくなってしまった。

よく探せば、専門店やデパートなんかでもあったのかもしれない。


またカヌレのブームがやってきたらしく、田舎でもあちこちで見られるようになった。

イタリア料理のお店のテイクアウトについてきたり、ケーキやパンを委託販売している所にあったり、コンビニでも売っている。


どれも美味しかった。

多分ね、前のブームの時よりもブラッシュアップしていて、前は食べていないけれど、きっと美味しくなっていると思う。

どこでどんな値段の物を食べても、あれもそれも美味しかった。


実はうちの台所の引き出しには、カヌレ型がずっと眠っているのだ。

前のブームの時に、買えないのなら自分で作ってやろうと、生協のカタログで型を売っているのを確認して買っておいたのだ。

ただ、レシピを確認すると、「蜜蠟」という聞いたこともない見たこともないものが入っていて、入手法がその時点では浮かばなかったから眠り続けていたのだ。


他の物(溶かしバター)で代用することもできるし、今はネット通販で蜜蠟を購入することもできる。


いつかカヌレを買ってきて食べてから作ってみようと買ったカヌレ型。

もうかなりのカヌレを食べたのに、一向に私のエンジンがかからない。


コンビニであんなに安価で買えてしまうというのが罪作りだ。


せめて子どもや夫が「作って」とせがんでくれないと、どうも力が出ない。

アンパンマンじゃないけど、今は濡れた顔で力が出ない状態。


目につく場所に置いておけば、気力が満ち満ちている時に作ろうという意欲が湧いてくるかもしれないと、テーブルの上に置いてみたがオブジェ化しそうなので、もう一度洗い直して、そっと引き出しに戻した。


ケーキなどの型で、自分が持っているもので一度も使ったことがないのは、このカヌレ型のみ。

そろそろ出番を作ってやりたいところだ。



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