第108話 煩悩 妄想

宝くじが当たったら、平屋の豪邸を建てて、立派なガレージに車とバイクを入れて、手芸部屋やぬいぐるみ部屋が欲しいなあなどと考えるのが好きだ。

釣り道具を置く部屋もいるな、サウナがあったらいいなと、寝る前に妄想するのが私の幸せ。


実は私は元愛知県民である。

同年代以上の方ならご存じかもしれないが、大いなる田舎として有名な土地である。

愛知県では嫁入り前に新居をご近所さんや親せきに公開するらしい。

タンスの中まで覗かれるとか。その為に高価な着物など用意したりして。

私の親はどちらも愛知県出身ではないので、そんな話も「へー」と聞くだけ。

街のくせにかなり田舎じみた風習。


夫と結婚するにあたって、最低限の家具は必要だろうと、私の実家の近くの大きな家具店で家具を何点か選んで、こちらに運んでもらった。

待っていたら、きちんと紅白の幕に包まれたトラックが到着した。

夫は出勤後で私一人で迎えたが、あまりの派手さにびっくり。


絶対、ここまでの道中、みんな見てる。

視界に入ったら、私も二度見する。今なら撮られてSNSにあげられそう。

それくらい春の青空に負けないくらい紅白の幕は輝いていた。


大いなる田舎付近から、本当の田舎へ。

私たち夫婦の家具が運ばれた。

こっちのご近所さんも見てたんだろうな。


大きな荷物の搬入時は誰かが見ている。

そして何をしているのか訊かれる。

ずっと見ていたらわかるのに、私の口から直接詳しく聞きたい模様。

こういうやり取りで距離を縮めるということもあるのだろうけど、明らかに忙しい時は遠慮してほしい。


本当に宝くじが当たったら、外から見えない中庭を作って、そこにベンチを置いて誰にも邪魔されることなく昼寝したい。


今は戸を開けて昼寝していても、外から話しかけてくるおばあさんとかいるのだ。

知っている近所の方ならともかく、遠くから散歩に来ている知らない人だったり。

テレビを見ていても、外から「今日はいい天気ねー」とか聞こえてきて、誰かと立ち話でもしてるのかと思ったら、家の中にいる私に話しかけていたりで混乱する。

「え?あ?そ、そうですね。天気いいですね。」

庭ごしに話しかけてくるなんて、田舎に慣れた今でも心臓がばくばく。


家は家、外は外。

境目は大事。結界が破れているのか。


昼寝する時は窓は閉めてカーテンをひくようにした。







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