第107話 手仕事

私は実家の母親が料理や裁縫がからきしダメだったので、大学生になって実家から出る前にはだいたいのことができるようになっていた。必要にかられて。


結婚し、子どもができて、出産直前になって大量の布おむつの布だけが母親から届き、急いでミシンを購入して、妹と手分けして布おむつを完成させた。

第一子出産時は妹がサポートに来てくれていた。助かった。


田舎に引きこもっていても、子どもは普通に成長していき、着るものもサイズアップしていく。

当時、かなり節約していたのと、隣の市まで行かないと小さい子の洋服が買えないこともあり、赤ちゃん雑誌に載っていた手作りの洋服の型紙などを参考に自分で洋服を縫ってみたりした。

サイズが小さいから、割とすぐに仕上がった。


私が子どもの服などを自分で作れると知った祖母や叔母が、子ども用にと布地を送ってくれたのも助かった。


子どもが幼稚園に通うようになるとわかるが、幼稚園というのはたくさんの小物を要求してくる。

サイズやデザインが幼稚園指定で、自作しなくてはならないものがたくさん。

子どもの好きそうな布を選び、入園に向けて仕上げていく。

他の子と同じ布になるとトラブルがある可能性もあるので、趣味が被らないように自分の子のものとすぐわかるように工夫もしなくてはならない。


幼稚園や小学校低学年というのは、こういった小物を必要とされることが多い。

あれを入れるもの、これを入れるもの、別々に作って持たせてくださいと言われる。

それを大人しく準備する。


子どもの洋服もそのくらいの時はまだたまに作っていたから、うちは目立っていたのかもしれない。

子どもも「お母さんに作ってもらった」と言っていたこともある。


そういうことを聞きつけるとなぜか

「ねえ、うちにも作ってくれない?」ということを言い出す人が出てくる。


そういう子ども服が作れるような特殊な技術とかは、田舎ではただで提供すべきと考える人がいて、私が大卒とわかったら「無料で家庭教師をやってほしい」としれっと言う人もいたから、あーまたかとため息が出た。

「やってほしい」というか「やるべき」という感じでその時は言われたんだったな。


警戒心バリバリで

「うちの子専属だから無理よ」と断っても、無理なことを頼んで申し訳ないなというような顔もせずに、「えー、どうして?いいじゃん」と返してくる。


そもそもそんな仲良しでもないよ、お宅のお子さんとは。あなたともね。

仲良しでも断るし、そんなこと言い出す家の子とは距離をおきたい。


全部うちの持ち出しでやってもらえて当然みたいな顔してるのも、恥ずかしくないのかな。


「やだー。無理無理。」


しっかりお断りして終了かと思ったら、私がわざわざ子どもに洋服作ってひけらかしてるというようなことを言いまわってるのを知って、うんざりして作るのをやめてしまった。

田舎だと誰も諫めたり咎めたりしないんだなと学んだ。



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