第102話 お弁当
うちの食が細い方の子のお弁当箱は、汁物が入るタイプで、外で働く人たちが使っているタイプの小さい物だった。
学校から帰ってきて塾へ行き、そこでお弁当を食べて勉強する子なんかもよく使っているものらしい。
もう一人の子のお弁当箱は普通の二段のもので、食の細い子と同じ物を詰めるのだが、時間が迫っていると一番焦るのが、その汁物であった。
お味噌汁を多めに作って入れたり、カップスープを溶かして入れたり、そういうものでいいわけなのだが、ある日、時間もないし、そういうストックも皆無という状態に気づいて呆然とした。
汁物を入れるその入れ物を空のままにして「ごめんね」と謝ることも考えたが
ちょうど目の前を見たら、私が好きなお菓子があったので、代わりにと入れ物の中に入れたのだ。
汁物がなくても、おやつがあるから機嫌悪くなることもないだろうし、お腹も満たされるからなかなかいいアイディアだなあと私はほくほくだったのだが。。。
帰ってきた子どもが
「なんでムーンライトを入れたの?みんなで大笑いしたわ!」と。
みっちりミニトマトを入れるより、喜ぶと思ったんだけどなあ。
汁物の入れ物がない二段弁当の子の方には、お弁当に詰めるモノに困って、ミニトマトをあちこちにとか、ブロッコリーをあちこちにとかやって、たいそう怒られたので、お菓子だったらいいかなと思っただけなんだ。
高校生で私学だったから、別にお菓子やパンをお弁当のほかに持っていても怒られることはなく、全然問題じゃないんだけど、やはりお腹が温かく満たされる方が良かったんだなと反省したのだった。
どうもこのムーンライト事件は子どもたちにはツボだったのか、大学で語ってうけているらしい。どこがうけるのが母にはさっぱりわからないままだ。
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