第66話 寒い話
季節外れのお話。
我が子がやや遠い高校に進学したために、毎日駅まで車で送迎していた。
部活も熱心にしていたから、帰りはテスト週間以外は暗い時間。
夫と私と交代で送り迎えしようと最初は約束していたのだが
結局は二人仲良く送り迎えをしていた。
日々折々話をするのも楽しかったので。
とある晩、駅で子ども二人をピックアップして、家から数キロの場所に
さしかかったところ、道の端に薄手の浴衣を着た高齢男性が立っていた。
もうかなり季節も進んで晩は寒いくらいの時期であった。
「あんなところに人がいるから気をつけてね」
高齢者は車が来ても車の方が止まると思っているから、飛び出してくることが多い。
事故にならないように注意喚起したつもりだったのだが
「え?何?怖いこと言わないでよ」
と運転している夫に言われた。
子どもたちも笑った。
「いやいや、何?よく見て、あそこに人が立ってたよ。」
それから車の中は沈黙。
「怖いこと言ってみただけでしょ?やだなあ。」
「いたって、あそこに。」
すぐに交差点を曲がって進んでいたから確かめようがない。
確かめるのも怖い。
その場所は車で毎日通るので、しばらく「お母さん、何か見たよね」と
からかわれた。
私としては逆に本当は皆見えているのに、私を怖がらせようとして
見えていないと言ったのだと信じたい。
それまでも昼間にたまにそんな格好の人が立っていたから私は
夜にも立ってるんだなとしか思っていなかった。
…昼も見えてはいけない人だったのだろうか。
その近辺のご家族の構成を知らないから真相は闇の中である。
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