第55話 訪問者
何処に住んでいても迷惑な訪問者はいる。
興味のない宗教、商品、募金。
こちらの状況を無視して、玄関先まで出てくることを要求してくる。
モニター付きのインターフォンがついている物件であれば
快適な室内からスマートにお断りできるが、昔ながらの物件住みなので
玄関まで行って、ドア越しにお断りしなくてはならない。
これが地味にストレスである。
実家が神社で、高額商品は夫に相談しなくてはならないくらい支配されていて、
募金はしない強いポリシー持ちの妻を毎回演じなくてはならない。
まあ、それくらいは許せる範囲。
しかし一番イヤなのは、こちらが映画を見ている間やゲームで佳境を迎えている時に
ピンポンピンポン連打してきて、わざわざ作業を中断させて移動を強いられること。
だいたいの人間がそこで訪問者に対して、親近感などではなく逆の怒りが湧いてくるので、その先の話がスムーズにいくわけなかろうと思う。
営業の電話でも同じことである。
荷物が届いたのかなと思って玄関まで行くと、招かれざる人たち。
途端に怒りゲージが上がってくる。
「わざわざこんな田舎にまで足を運んできたんです。
話くらい聞いてくれてもいいでしょうに。」
と驚きの主張をしてくる人間も少なくない。
知らない。そんなこと。頼んでもない。
田舎で遠いのが分かった上で足を運び、知らない人間に絡んでいるだけ。
「私も手ぶらでは帰れないんです。」
それも知らない。田舎の人はこんな話に心が揺れるんだろうか。
「ああ、どうぞ興味もないし、手ぶらでお帰りください。」
そういいたい気分ではあるが、こういう手合いの人間は、どんな嫌がらせをするか
わからないものだ。
適当にしばらく話を聞いてやり、うちは絶対無理だということをわからせて
帰ってもらう。
子どもがいるということで、高額な教育セットを定期的に押し売りにくる会社があって、そこは訪問できるギリギリの時間にやってくる。
お決まりのセリフは
「遠くからわざわざこのようないい商品をご紹介にきました。
お近くの〇〇ちゃんのお宅でもご購入いただきましたよ。
お宅ももちろんご購入されますよね?」
よそ者一家には、〇〇ちゃんがわからない。
本当に存在するのか、存在しても購入しているのか、そして購入したとしても
なぜそこに我が家が後追いしなくてはならないのか。
本当に毎回ご苦労なことだなあと思って断り続けていた。
我が子が学校に上がってから聞くと、実際同級生で購入した家があったそう。
ああ、それで田舎だというのに熱心に次のカモを探しに来ていたのだと納得した。
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