第19話 強い

田舎の寄り合いでは、席順にうるさいとか聞く。

年齢とかその地区での位置みたいなもので、上座とか下座が決まるとか。


お寺とか神社とかのある地区なんかだとお祭りもあるから

そういうのでも上下があるようで。


うちは運のいいことに小さい地区でお祭りもなく

それほどはうるさくはない。



子どもが地元の小学校へ行くようになって、うちが最下層とされていることに

驚いた。

よそ者夫婦であるという一点で。

排他的であることはそこまでで学習済みだから、付き合ううちにあちらの

気持ちがほぐれてくれることを期待するしかないなと思うだけ。


入学式その日に担任教師が

「〇〇さん(うちの子)はよその子だから親切にしてあげて

 仲間に頑張っていれてあげてください。」と言った。

職員室では「あの子を潰してやる」と言ってたことを後日聞いた。


なーんにもこちらで悪いことなんてしてないのに

どうしてそうも悪意が向けられるのかが未だにわからない。


明らかによそ者がいれば、おおっぴらにつまはじきにしても

誰もとがめない土地なんだ、これが同じ時代を生きている

同じ国の人間なんだとビックリ。


性善説で生きてきたけれど、ここから考え方が変わった。



子どもを学校へやるようになってわかってきたのは

田舎の教育で重要なのは「強い子」ということ。

賢い子ではなく、「強い子」を求めている。


勉強よりスポーツ。いじめられっ子よりいじめっ子。

体が弱くて優しくてニコニコしている子は

成績が抜群に良くても軽んじられていた。


それで常にスポーツ上位層にいられるように

我が子は体を鍛えていったのだ。


体の弱い我が子を田舎のキレイな空気でのんびり育てたいという

街の人もいるかもしれないが、田舎は弱い子をナチュラルに

いじめる子が多いし、それを誰もとがめないからオススメはしない。

街で体を持て余している暴れん坊の方が向いている。


スポーツを本格的にやっていって、プロや実業団に入りたいというくらいの

レベルだと、早々に田舎を離れていくことになるから

田舎でメリットがあるのかないのかわからない。


中学や高校も人数が少ないから、部活の種類もなくて選べないし、

陸上以外はずっと続けられない感じだからか、小学校から陸上競技への

熱意はすごい。

周りでも無理して練習させて疲労骨折という話をよく聞いた。


うちは頑張ってスポーツをさせていても、それで食べていけることは

ないと早い段階で悟っていたが、スポーツの沼にはまっていく家は

田舎では多いなと感じている。


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