第6話 よそ者

古い街なんかでは、100年以上住まないと「よそ者」扱いだと聞く。

都市部だと入れ替わりが激しいのもあって、よそから来た人というのに

それほど抵抗もなく、それなりに皆親切だ。


自分の子どもの頃も、転校生をのけ者にするなんてことはなかった。


これが田舎だと違うのだ。


夫の職業もハッキリしていて、怪しいものではないはずなのに

挨拶をしても挨拶は返してもらえないし、あることないことを

吹聴されることは珍しくない。


自分と同世代以上がそんな感じ。


気分転換に少し遠くまで散歩に行ったら、むすっとしたおじさんおばさんたちが

私の挨拶を無視して嫌な視線を送ってきたものだ。

声が小さくて聞こえないのかな?と大きめの声で再度挨拶しても

睨んでくるだけだった。


同じ地区のおじさんおばさんは、きちんと挨拶してくれて、なにがなにやら

当時はわからなかった。


地区によって上下関係もあるらしくて、下と見ている地区のよそ者に挨拶なんか

してやらないぞということらしい。

なんじゃそら?と思いつつ、気にせず暮らしている。


たまにそれでも愛想のいい方もいて、挨拶を返してくれて

「〇〇地区(私の住んでいる地区)によそから来た人がいるんだって。

 気を付けなよ。」とか親切なのか嫌味なのか言ってくれたり。

それ、私のこと!


知らないうちに違う地区の知らない人に自分の情報が流れていて

いびってやろうという雰囲気になってることを知ると、さすがに驚く。


そういうのは、我が子が学校にあがっても続いて、ここまで排他的だと

よそから人は入ってこないし、地元の子たちもよそで知り合ったパートナーを

連れて帰ってきたくないだろうなと思った。


地元カップルが最上位で、うちのようなよそものカップルは必要以上に

のけ者にされるし、嫌がらせも割とされるし、そういうのを見て

何も感じない人だけが残るから、ずっとこのままなんだろう。


過疎化が進んでいるから、市でもUターンやIターンに力を入れてはきているが、

自分のルーツがその田舎にあるか芸能人でもない限り、田舎は居心地の

いい場所にはならないと私は思う。


うちの場合、旦那さんが地元の方で奥さんが街から来た人という家や

奥さんが高学歴の家とは仲良くしてもらえる確率が高かった。

あとは夫の仕事関係で付き合いがある家を中心に、少しずつだが

普通に付き合ってくれる人が増えていった。


一番驚いたのは、我が子が小学校に入学したその日に

「これからあなたの思い通りにはならないんだから、覚悟してね!」と

知らない保護者に宣言されたこと。

保護者が集まっている場所で言われたのだが、

「そんなこと言ってたなんて知らなかった」とその場に居た人が

口裏合わせてるのもなかなかの闇だと思った。


実際、PTAの役員にずっとさせられて働かされた。

田舎の結託ってすごい。

よそ者が憎いのなら、自分たちで好きなように活動すればいいのに

こき使いたいという欲求が上回るんだな。

行動が矛盾しているのに呆れていた。

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