第45話 数週間経過して

 数週間が経過した。

 この間、俺は、異世界組や従魔の街に食事を運搬し、畑仕事を手伝ったりしていた。

 最近では、リリス達がジャズBARを開店した。

 管理者さんから、俺がオーナーに任命された。

 売上の半分をもらえるとか、太っ腹過ぎる。

 俺は、桜から簡単なおつまみレシピを教えてもらい、リリス達に伝えた。

 ジャズBARには、ピンからキリまでの各種お酒と、ナッツ類と果物なども準備した。

 ピアノも置いてある。

 開店までに、リリス達が練習していた。

 開店前にプレオープンを行い、おじ様と落合さんに来てもらった。

 落合さんからは、落ち着いた色気のある上品なパーティドレスの提案を受けた。

 おじ様からは、ジャズの指導があった。

 なんとおじ様は、サックスが趣味だったようで、ピアノとサックスの共演の練習も行われた。定期的に、おじ様にも演奏してもらおう。

 おじ様は、趣味だからという理由で、報酬は辞退したので、お酒やおつまみに関しては、無料で提供させていただくことにした。

 ゆくゆくは、リリス達の誰かにシェイカーでカクテルを作ってもらおう。


 こうして、順調に準備は整い開店した。

 客の入りも上々で、アダルト世代だった人達に人気のようだ。

 見た目は若返っているからハッキリしたことは分からないが、お客さまはみんな落ち着いていると聞いている。


 ダンジョンの攻略も順調で、アンデットと廃教会もサクッと攻略して、今は、21階層に挑める状態となっている。

 しかし、20階層では、アダマンタイトゴーレムがボスとして登場した。

 これぞまさにゴーレムという巨体でボス部屋の中央に立っていた時は、撤退が頭をよぎった。

 道中の、ミスリルゴーレムは数体と数が少なったため、体力的には問題なかったが、攻撃が通るか心配だった。

 しかし、その心配も杞憂で、せっちゃんの槍の投擲を不意打ちで受けて、コアが露出。

 そこを俺が矢で打ち砕き、アッサリと攻略できた。

 その後、部屋に戻って、アダマンタイトの塊を見せたラズのはしゃぎ様は、ビデオカメラを購入して永久保存したい! って気持ちになる程だった。

 ま、それからしばらくはアダマンタイト狩りになったんだけど。


 時間はかかったが、俺達の装備は、一新され、アダマンタイト製となった。

 せっちゃんも、全身にアダマンタイトを含有させて、黒色が強くなった。

 ザックリ言えば、暗黒騎士が、魔力を放出すると、蒼い輝きが全身から溢れ出るという厨二心を刺激する姿となった。


 そんな俺達は、21階層の森林ダンジョンに挑戦する。

 朝の日課、異世界組と従魔の街に、食事を届けて、準備を整えダンジョンへ向かった。


 21階層の森林ダンジョンは、木の間隔は広く、気をつけていれば、槍や大剣も振り回せるような場所だ。


 俺達は警戒しながら進む。


「気配が薄いけどぉ、あっちに4体程いると思うわぁ」


 と、トワさんが教えてくれたので、慎重に進むと、緑の服を身に纏った彼らは木の上に隠れていた。


「……エルフだ」


「拘束するわねぇ」


 トワさんの拘束魔法を受けて、慌て出すエルフを、俺は弓で撃ち抜いていく。

 サクッと4体を光に変えて、女性のエルフをテイムしたいことをみんなに伝えた。

 だが、ぱっと見て、男性か女性かが分からない。

 出会うエルフがみな、金髪ロングのため、胸の膨らみで分かるかと思ったが、従魔の街にいたエルフ達は、何がとは言わないがペッタンだったからだ。


 しばらく殲滅して進んでいると、真っ白な髪が地面につくほど伸びている小柄な人型を発見した。

 鑑定すると、エルフ(アルビノ)と表示された。

 特殊個体ではなさそうだが、アルビノって響きに心が惹かれてテイムすることにした。


 トワさんに拘束魔法をお願いして、テイムを発動する。

 何回も失敗したが、アルビノエルフは何もしてこなかった。

 トワさんが、そろそろ厳しいわぁっと言ったタイミングで、ようやくテイムすることが出来た。


 トワさんの消耗もあったので、テイムしたアルビノエルフを抱えて部屋に戻った。


「マスター、おかえりなさい。あ、新しい子ですか? わぁ! 真っ白ですね!」


「ただいまラズ。そうなんだよ。真っ白なんだ」


「お名前は、なんというのです?」


「まだ決めてないんだけど……真っ白だから、ましろにしようかな?」


「ましろさんですね! よろしくお願いしますね!」


「……ん。よろしく」


 ましろは、座布団を見つけて、そのまま、ぐでぇっと横になってしまった。


「おーい、ましろー。みんなの自己紹介まだだぞー」


「……ん」 


 返事はしたけど動かないましろ。


「しょうがないわねぇ。私はトワよぉ」


 そう言って抱きかかえ膝に乗せるトワさん。


 後頭部の柔らかさに目を見開くましろ。


「ふぉー、ここは誰にも渡さない」


「ましろ女の子だよな?」


「ん、でもここは至福」

 

 そう言ってまたしても、ぐでぇっと脱力するましろ。

 トワさんが微笑んでいるから、いいか。


 その後、せっちゃん、桜、俺と自己紹介をした。


「あ、そうだ。ましろって植物を成長させる魔法使える?」


「ん、たぶん」


「じゃあ、異世界のリンゴの木に使ってもらいたいから来てくれる?」


「ん」


 トワさんの膝の上から両手を広げるましろ。

 抱っこしていけと?

 そこから抱っこは難しいんだよなぁ。

 どうやってもトワさんに触れちゃうからさ。


 俺が悩んでいると、トワさんが、ましろの両脇に手を入れて立たせてくれた。


「ありがとう。トワさん」


「いいのよぉ、でもこの子ぉ、力入ってないから拘束しておくわねぇ」


 拘束され宙に固定されるましろ。


「これ、楽」


「この状態を楽と言える存在を初めてみたよ。よいしょっと。トワさんありがとう」


 抱っこするタイミングで拘束を解除して、微笑んでくれた。


「じゃあ、ちょっと行ってくるねって、抱きつかないと落ちるぞ?」


「ん」


 ダメだ全然力入ってない。

 しょうがない肩に担ぐか。


 肩に担ぎ直し、異世界組の元へ。


「お疲れ様ー」


「あ、シゲオ様……その子は?」


「おう、新しくテイムした子。名前は、ましろって言うからよろしくね」


 俺は、後ろを向いて、ましろを異世界組にみせる。


「ん、よろしく」


「完全に脱力してるな……」


「お顔が全然見えませんねぇ」


「この子、なんかぐでぇっとするのが好きなんだと思うんだよね。でも柔らかくて包み込まれる感触は好きだと思うから、こっちに来たら反応するかなって思ったんだけどね」


「……シゲオ。ソレ早く言って」


 ましろは、何かを見たらしく、スルスルと俺の腕を抜けて降り立ち、駆けていった。


 振り向くと、フィオナの胸を触っていた。


「大きい。でも違う」


 何か違うらしい。


 次はリンの胸を触り、頷き、膝に乗った。


「尻尾で包んで」


「わっちの尻尾ですか? いいですよ」


 尻尾に包まれると、カッと目を見開くましろ。


「天国見つけた。ここに住む」


「仕事したら帰るぞー」


「うふふ、孫が出来たみたいで、わっちは楽しいですよ?」


「ありがとうリン。じゃあ、ちょっとゆっくりしてから帰ろうかな。ましろ寝るなよー」


「ん……」


「返事はいいんだよな、返事は。ま、いいや。向こうでお茶の木も育ててみたからさ、みんなも飲んでみてよ。お湯あるかな?」


 そう言って、急須と湯呑み、お茶うけに煎餅を取り出して、準備する。

 アンナは、また自分の胸を触っていたが、声をかけるとお湯を沸かしにいってくれた。


 その後、みんなでゆっくりお茶を飲んだ。

 フィオナとリンが、この組み合わせを好きになったみたいだ。

 次は、漬物持ってこよう。


 リンの身体を堪能し満足したましろを肩に担ぎ、リンゴの木のもとへ。

 木の成長を頼むと、見えないと言われた。そりゃ担がれてるからね。

 しょうがないので、後ろを向く。

 

 俺から見えるのは、ましろの下半身だけだったが、緑の光を放っていたので、魔法を使ってくれたのだろう。


「ん、終わった」


「お、さんきゅ。おぉ! 実がなってる! すごいなましろ」


 振り返り木を確認すると、黄色のリンゴが成っていた。


 アンナは、首が90度になるんじゃないかと心配なほど首を傾げていた。


「ごめんアンナ。これ黄色いリンゴだったみたい。確認してなかったな」


「あのシゲオ様、その言い方ですと、何種類もあるように聞こえるのですが」


「うん、あるよ。赤いリンゴでも何十種類もあるし、黄色や緑色の青リンゴって呼ばれる物まで」


「そ、そんなに! す、全て食べることは出来ませんか!?」


「落ち着いてアンナ。寿命なんてあってないようなもんだから、ゆくゆくは全部食べさせてあげるからね。とりあえず、この黄色のリンゴ食べてみようよ。ダンジョン組にも持っていくから余分にお願いね」


「承知しました! お任せください!」


 アンナが張り切り、すぐに8個程収穫してくれた。

 それを持って家に戻ると、リンが切ってくれた。


 蜜は入ってないな。

 食べてみると、丁度いい歯応えと口に広がる果汁と香り。

 シナノゴールドとかそっち系の品種だな。

 これはこれで、美味いんだよな。


 アンナをみると、新たなリンゴに衝撃を受けている様子。

 あぁ、だんだんうっとりし出しちゃった。

 そっとしておこう。

 

 ましろは、リンの膝の上に乗り、フィオナに食べさせてもらっていた。

 2人からしたら、孫が出来た感覚に近いんだろうな。

 微笑んで世話をしている2人の表情が温かいからな。


 区切りがいいところで、俺とましろはダンジョンに戻り、みんなに黄色いリンゴを渡した。こっちでも好評だった。


 夕食は、ましろの歓迎会を兼ねて、異世界組と一緒にバーベキュー。

 ましろは、縁側に座り、リンとフィオナに挟まれて、尻尾で支えられているような感じでお世話されていた。

 これはこれで、新しい癒し要員なのかもしれない。



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現在の主人公装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

ウエットスーツ一式


(アダマンタイトで強化された)

短剣

長剣

カイトシールド

コンポジットボウ

ハーフプレートメイル

アームガード

グリーブ

ウルフマント

リザードマンの皮手袋

スノーシュー

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スキル一覧


テイム

体術

短剣術

長剣術 

盾術 

弓術

魔力

魔力操作  

魔力向上 

上級回復魔法

(回復魔法には、解毒などの魔法も含む)

生活魔法

補助魔法

身体強化

腕力上昇 

脚力上昇 

体力向上 

回避補正

鷹の目

鑑定

錬金術

収納

矢弾作成

水中行動

気配察知

異世界言語

冷寒耐性

熱暑耐性

ダンジョン帰還

遮音結界

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持ち物一覧


若返りの薬

チェーンソー

アダマンタイト両手剣

アダマンタイト槍

アダマンタイトタワーシールド

アダマンタイトの腕輪

ガーネットとミスリルのネックレス

隠者のローブ

ツルハシ 3本

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設備一覧

内装 ロッジ風

初心者物干しセット

鍛治設備一式

小さな個室

トイレ

脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)

冷蔵庫

キッチン設備一式

大きな座卓一式

配信用カメラ

ブルーレイ対応液晶テレビ

畑 リンゴ、桜の木

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従魔一覧


ヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)

念話、食事

ドワーフ(ラズ)

鍛治能力向上

リリス(トワさん)

拘束魔法、拘束魔法強化

ヴァンパイア(桜)

異空間収納、料理

エルフ(アルビノ)(ましろ)

アンナ 赤髪ロング (異世界奴隷)

フィオナ 狼人族

リン 狐人族 シロとクロ

——————————————

週数間分とマージン等 Dポイント 120,000

食材等 Dポイント 20,000

残 Dポイント 146,005

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