第31話 異世界トラブル

 次の日、俺はアンナに謝るために、1人で宿へ転移した。


 すると、ローブのフードを目深に被ったアンナがベッドに腰掛けていた。


「アンナ昨日はごめ————」


 全てを言い切る前に、アンナは俺を確認すると抱きついてきた。


「えッ!? ど、どうしたの?」


 俺が声をかけても何も言わず抱きついていている。

 トワさん連れて来れば良かったと邪念が過ぎる中、アンナが震えていることに気づいた。


 いや、マジで何があった……。


 アンナの震えが治まるまで、そっとハグしておいた。


 しばらくすると震えが治まり、小さな声で、話してくれた。


「シゲオ様、すみません。私がここにいることがバレてしまいました」


「そうなんだ? でも、それだけでこんな状態になる? なにかあったの?」


 俺達はハグしたまま話をする。


「昨日……お昼にレッドブルの串焼きを食べようと、屋台に行って、串焼きを近くのベンチで食べていたのです」


 あの串焼き美味しいからね。

 ここまでは問題ないね。


「串焼きのタレがローブにつかないように、フードを軽くあげて食べていたのです。その時に、呼びかけられまして、その人を確認したら、私を助けてくれた冒険者だったのです」


「あぁ、それで怪我が治っているのがバレちゃったんだ?」


「はい……」


「別にそれだけなら、街を移動すれば大丈夫だと思うけど……なにかあったんだよね?」


「はい……どうやらその人は、ずっと私を探していたらしいのです」


「怪我が心配で探してたとか?」


「いえ、私を買うために探していたのです……」


「おぅふ……なんとも……あれ? でもだいぶ酷い怪我って知ってるよね?」


「はい……そこで、その人は上級回復薬を買えるまでお金を貯めてから、安く私を買おうと思っていたと話していました」


「話しちゃったんだ……」


 思っていてもそれは話しちゃダメだろうに。


「あ、いえ、私にはすでにご主人様がいますと話した後に、その人が激昂しまして、そこで罵倒と共に聞きました」


「あぁなるほど」


「その人が、昨日から後を着いてきて……なんとか撒いて宿に帰ってきたのですが、怖くて眠れなかったのです……」


「それは、大変だったね。ごめんね側に居れなくて」


 アンナは首を振り、ギュッと抱きしめる力を強くした。


「とりあえず、この街からは離れたいよね。どこかあてはある? 遠くても大丈夫だよ?」


「それでしたら、海を越えた先にあるあずまという国なら、さすがにあの人も来れないと思います」


「了解。じゃあ今日からそっちに向かおうか」


「よ、よろしいのですか? 奴隷のために金貨が何枚も必要となる旅になっていまいますが……」


「うん大丈夫。別にこの世界でやりたい事も、そんなに無いし。観光がメイン? って感じだしさ」


 アンナは、それを聞くとまたギュッと抱きついた。

 しばらくすると、落ち着いたようで、涙が残る顔を俺に向けた。


「シゲオ様! 私の一生を捧げお仕えさせていただきます!」


 そこまで? 重いよぉっという言葉は飲み込んで……。


「そんな気にせず大丈夫なのに。でも、ありがとね」


 と言って、そっとハグしておいた。


「じゃあ、せっちゃんを連れてくるから、待っててね」


「はい!」


 俺は、せっちゃんを連れてくるためにダンジョンに帰還した。


 みんなに、異世界で買った奴隷にトラブルがあったため、しばらくダンジョン攻略は中止すると話した。


 みんな話を聞くと、助けてあげてと言ってくれた。

 優しいね。良い子達に恵まれたわぁっと心の中で涙した。


 俺は、せっちゃんを連れて異世界へ。

 宿に転移した時、アンナは初めてせっちゃんの念話を聞き驚いていた。


 そりゃ驚くよねぇ、それに凛とした綺麗な声だし。


 アンナが落ち着いた後に、宿の主人にトラブルがあって旅立たないといけないと話すと、銀貨10枚と、パンとチーズ、干し肉をくれた。

 宿賃の残りの金額と朝食の代わりらしい。

 ありがとう主人! 砂糖を楽しめよ!


 俺達は、宿を後にし、東に向かう馬車乗り場へと向かった。


 まぁアレだ……執念深いやつは、張っているよね。

 アンナがそっと指差した方を見ると、馬車乗り場の近くに、冒険者姿で40代くらいの男が辺りを見回していた。


 うーん……俺とせっちゃんの陰に隠れながらなら、案外バレないか?

 あ、タワーシールドなら持ってても武装と思われないかな?

 ゴーレムだし、取れませんって言えばいいか。


 俺は、そう考え、せっちゃんにタワーシールドを渡し、その陰にアンナを入れて、馬車に向かった。


 思いのほか作戦が上手く行き、何事もなく馬車に乗ることに成功した。


 馬車が発進するまでドキドキしたが、男はこちらに気付くことなくどこかに行ってしまった。


「ふぅ、上手くいったね。良かった良かった」


「私も胸がドキドキしています……」


 そうして、俺達は、無事街から脱出できた。


 馬車は、ガタガタとお尻が痛くなりました。


 東に向かう最初の町に着いたときに、馬車を降りて、アンナをせっちゃんに抱えてもらって、走って行くことにした。


 アンナはキャーキャー言ってたけど、死にはしない。大丈夫! と言ってガンガン走った。


 夕方になってきたので、その時に見えていた町に入って宿を取ることにした。


 特に何事もなく宿の部屋まで行けた。


「だいぶ進んだんじゃない? アンナ、後どれくらいかわかる?」


「……」


「アンナー? 大丈夫?」


「だ、だいじょう、ぶじゃ、ない、です……」


「ご、ごめんね? 今日は、ゆっくり休んで。朝もらったパンとチーズと干し肉置いておくね。あと宿の主人からスープだけ貰ってくるから待っててね」


 俺は、宿の主人にお金を渡して、温かいスープをもらい部屋に戻った。


「じゃあ、ここに置いておくから、食べれるようになったら食べてゆっくり休んでね。あ、あとこれサイズが合うか分からないけど、下着とかも置いておくから、元気になったら着てみてね」


「も、もうしわけ、ありません……ありがと、ござ、ます」


 俺は苦笑いしながら、じゃあまた明日と声をかけて、ダンジョン帰還を発動し、ダンジョンの部屋に戻った。


 みんなと話をしながら、夕食を食べて、ゆっくり過ごし、就寝した。






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現在の主人公装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

ウエットスーツ一式


ミスリルの短剣

ミスリルの剣

ミスリルのカイトシールド

ミスリルコンポジットボウ

ミスリルハーフプレートメイル

ミスリルアームガード

ミスリルグリーブ

ウルフマント

リザードマンの皮手袋

スノーシュー

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スキル一覧


テイム

体術

短剣術

長剣術 

盾術 

弓術

魔力

魔力操作  

魔力向上 

上級回復魔法

(回復魔法には、解毒などの魔法も含む)

生活魔法

補助魔法

腕力上昇 

脚力上昇 

体力向上 

回避補正

鷹の目

鑑定

錬金術

収納

矢弾作成

水中行動

気配察知

異世界言語

冷寒耐性

熱暑耐性

ダンジョン帰還

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持ち物一覧


若返りの薬 1本

チェーンソー

ミスリルの両手剣

ミスリルの槍

ミスリルタワーシールド

ミスリルの腕輪

ガーネットとミスリルのネックレス

隠者のローブ

ツルハシ 3本

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設備一覧

内装 ロッジ風

初心者物干しセット

鍛治設備一式

小さな個室

トイレ

脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)

冷蔵庫

キッチン設備一式

大きな座卓一式

配信用カメラ

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従魔一覧


ヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)

念話、食事

ドワーフ(ラズ)

鍛治能力向上

リリス(トワさん)

拘束魔法、拘束魔法強化

ヴァンパイア(桜)

異空間収納、料理


アンナ 赤髪ロング (異世界奴隷)


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食材等 Dポイント 200

残 Dポイント 42,995

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