第20話 9階層 (長め)
8階層を攻略した次の日、俺達はゆっくりした時間を過ごしていた。
ラズとトワさんにネックレスについて聞いてみた。
「昨日の戦利品のネックレスだけど、何かわかる? 呪いの装備とかじゃないよね?」
「僕は品質や素材なら分かりますよ。品質はとても高く、素材はミスリルとガーネットですね」
「おぉ、結構良い物だね。トワさんは何か感じる?」
「そうねぇ、呪いや邪な魔力は感じないわぁ」
「なら、ただのアクセサリーかな? 付けても問題ないなら、トワさんにあげたいんだけど」
「あらぁいいのぉ?」
「もちろん。だからって訳じゃないけど、ラズには作業着用にツナギとか買ってあげる予定だけどね」
「いいんですか? あ、ありがとうございます」
えへへっと笑うラズと、微笑むトワさん。
「せっちゃんにはぁ何もないのぉ?」
「せっちゃんさえ良ければだけど、またミスリルバグの魔石を一緒に……まぁ、せっちゃんが倒すんだけどね……アハ、ハ……」
苦笑いしか出来ない俺です。
不甲斐なし。
それでも、せっちゃんはサムズアップしてくれた。
良い子やぁ。
「ありがとうせっちゃん。不甲斐ない主人でごめんよー」
肩をポンポンされ、再度のサムズアップです。
問題ないってことだろうか。そう思うことにしよう。
「ありがとう。じゃあ、トワさんにはネックレスをどうぞ」
トワさんは、うふふと微笑みながら、俺に背を向け、片手で髪を纏めています。
着けろと言うのですね。
そうですか。
承知しました!
魅力的な頸と肩越しの双丘。
絶景かな。
しかし、魅力的、綺麗って感情しか残っていませんね。
興奮する感情が湧き上がる端から消えていく不思議な感覚が起きてます。
ネックレスを不器用ながら着けてあげると、ご馳走様ぁっとお言葉を頂きました。
「ふぅ、じゃあ次はラズね。一緒にショップ見ようか」
こうして、ラズを抱えながら一緒にショップを見た。
色に関しては、作業着ですからとのラズのお言葉をいただき、茶色のツナギと黒のタンクトップを購入した。
Dポイント 800消費。
そして、せっちゃんとダンジョンへ行き、2回ミスリルバグを討伐してきた。
2回目の魔石は、みんなと一緒におやつ時間に吸収していた。
その後、昼食を終え、9階層の話し合いとなった。
「次の階層は戦場で、人間とスケルトンが戦っていたけど、気配察知が何か微妙というか……」
「もしかしたらだけどぉ、幻影かもしれないわねぇ」
「あぁ、それなら人間がこっちを気にしなかった理由になるね。幻影と本物の区別は出来そう?」
「そこは任せてもらって大丈夫よぉ」
「よし、なら明日は9階層に行って様子をみる感じでお願いね」
みんなから了承をもらって、次の日に備えた。
次の日、ダンジョンに向かうため準備を整えた。
俺は、癒やされた日々にラズがミスリルで強化してくれた弓・防具、短剣。
せっちゃんは、ミスリルの剣とミスリルの盾。
トワさんは、ミスリルの腕輪とネックレス。
それぞれ準備を終えた俺達は、ラズの見送りを受け9階層へと向かった。
天候は曇天。
薄暗い荒野で、人とスケルトンが戦っている。
「トワさんどう?」
「やっぱり幻影ねぇ。本物だけ拘束するわぁ」
「了解。弓とか効果薄そうだけどね」
「大丈夫よぉ、あの胸のところにあるコアを射抜けば倒せるからぁ」
「そうなんだ。さすがトワさん。ありがとね。じゃあ、警戒しながら進もうか」
2人から了承をもらい、荒野を進み始めた。
しばらく進むとトワさんがスケルトンを拘束した。
そのスケルトンは、人間の幻影と戦っている振りをしていた。
幻影と本物は近づいてみても、見た目は同じで、トワさんが居なかったら、襲われるまで分からなかっただろう。
俺の気配察知が未熟なのか、トワさんが凄いのか……。
スケルトンはせっちゃんの一太刀で光となって消えていった。
その後もスケルトンはトワさんが判別してくれて、俺の弓でもコアを狙えば倒せることが分かった。
色々試しながら進んでいると、砦が見えてきた。
その砦の前には、大量のスケルトンが砦を背後に陣を敷いていた。
トワさん曰く、全てが本物とのこと。
倒してきた感触としては今までの敵より弱く感じるが、あの量はさすがに……。
大量のスケルトンは軍と言っても過言ではなく、少なくみても100以上は居ると思う。
「こりゃ多いね……」
「そうねぇ。ちょっかいをかけたらぁ、全部くるかしらぁ」
そう言って微笑むトワさん。
微笑む要素どこぉ?
俺は苦笑いしか返せませんでした。
「うーん、せっちゃん無双で行くしかないかな?」
「余裕でしょうねぇ」
あぁ、ここに微笑む要素があったのね。
「ヨシ! じゃあ、俺はトワさんの前に陣取って弓で倒していくから、せっちゃんはあの大群を蹴散らしちゃって!」
力強く頷くせっちゃん。
せっちゃんは盾と剣を構え突進していく。
俺も矢をドンドン敵に放つ。
さすがに量が多いため、こちらに抜けてくるスケルトンも多かったが、トワさんの拘束魔法で先頭のスケルトンを転ばせると次々に転んでいった。
そこに、せっちゃんが戻り撃破していく。
そうして、戦うこと数十分。
残りが20体程となった時、違和感のあるスケルトンがいる事に気がついた。
今までのスケルトンは、何も持っていないか、鉄の剣を持っていた。
だが、そのスケルトンは、何故かフライパンを持ち、及び腰で、周りのスケルトンより小柄だった。
「トワさん、あのスケルトン変じゃない?」
「そうねぇ、変ねぇ」
「やっぱトワさんから見ても変なんだね」
トワさんと話しているうちに、残りがその変なスケルトンだけとなった。
せっちゃんがゆっくりと、近づいていくと、そのスケルトンはフライパンを落とし、頭を抱えて蹲った。
「せっちゃーーーん! ちょいターーイム!!」
ピタッと止まってくれるせっちゃん。
俺とトワさんも、そのスケルトンに近づいてみる。
スケルトンは頭を抱え蹲ったままカタカタと震えていた。
「うーん……ここまでの状態の敵は今まで居なかったから倒すの忍びないね。どうしよ……」
「ご主人様の好きにしていいと思うわよぉ。放置でもテイムでもぉ」
「テイムかぁ……せっちゃんはどう思う?」
せっちゃんは、俺と自分を交互に指差し、スケルトンと俺を交互に指差し、最後に俺をハグした。
どういうこと?
「たぶんだけどぉ、せっちゃんを受け入れたようにぃ、そのスケルトンも受け入れてぇってことじゃないかしらぁ?」
せっちゃんサムズアップです。
「そういう事だったんだ! 分かった! ならば受け入れましょう!」
俺はスケルトンの肩に触れ声をかけた。
「君をうちの子とするから、受け入れてね……【テイム】」
【テイムが成功しました】
「よしテイム出来た。これからよろしくね」
「よろしくねぇ」
せっちゃんもサムズアップで挨拶。
当のスケルトンは、状況が目まぐるしく変わったせいか、あわあわしつつ、土下座した。
「土下座の文化がスケルトンにあったとは……面白いスケルトンだね」
「ご主人様ぁ、名前はつけてあげないのぉ?」
「あ、そうだね。君は男の子?」
首をカタカタ横にふるスケルトン。
「もぉご主人様わぁ……どうみても女の子でしょぉ?」
骨格だけじゃ分からないんですよトワさん……。
「そ、そうなんだ。ごめんね」
土下座という日本文化を披露してるし日本風がいいかな。
うーん……ガイコツ……曇天……暗いなぁ。
真逆で華やかな名前にしようかな。
花の名前とか……向日葵、紫陽花、梅……お梅さんってさすがにな。
なら、またしても日本の花って安直に行こう。
「君は、桜って名前でどうかな」
カタカタと頷きをして、また土下座した。
その光景をみて、俺は苦笑い。トワさんは微笑み。せっちゃんはうんうんと頷いた。
「ヨシ! じゃあこの後どうしようか。この砦の入り口がボス扉になってるけど、あちこちに散らばってる魔石集めたら結構時間かかるよね?」
「そうねぇ、でもぉ次もあの大群を倒すとなると面倒よねぇ」
「確かに。うーん、せっちゃんと桜に集めてもらおうかな。ご褒美は集めた魔石を吸収って事でどうかな?」
せっちゃんは、ダブルサムズアップです。
やっぱり魔石を吸収出来るの嬉しいんだね。
桜は、カタカタ辺りを見回し、土下座状態で何度も頭をさげた。
了承ってことかな。
「じゃあ、悪いけど2人ともお願いね」
そう言うと、せっちゃんは駆け出しドンドン吸収していった。
桜は、カタカタ骨を鳴らしながら、近くの魔石を一つ一つ吸収していった。
しばらく桜の様子を見ていると、魔石を吸収するごとに動きが滑らかになっていくような気がした。
「やっぱスケルトンも魔石で強化されてくのかな?」
「たぶんそうだと思うわぁ」
「トワさんやラズもそうなるの?」
「私はぁ、魔石じゃなくて生気と精気で強化されるのよぉ。ラズちゃんは亜人種だから無理じゃないかしらぁ」
「そうなんだ。じゃあ今もトワさんは少しづつ強化されてるんだ?」
トワさんは、徐に俺に近づき、そっと頬に口づけをした。
「うふふ、ご馳走様ぁ」
そう言う事らしいです。
役に立てっているようで何よりです! あっちは立たないけどね!
そんなやりとりをしていると、2人が戻ってきた。
「2人とも、お疲れ様。ボス戦行けるかな? 桜は、とりあえずトワさんと1番後ろにいてね」
2人から了承をもらい、ボス扉を開ける事にした。
砦の中は、建物が無く、広い空間となっていた。
奥の方には宙に浮かびローブを纏うガイコツ。
それを守るように、大量のスケルトン達。
「アレは、ワイトねぇ。拘束するけど魔法が来るかもしれないから気をつけてねぇ」
「了解。せっちゃん、盾を俺に。ここで防御に徹するから、雑魚は無視してワイトをやっちゃって!」
せっちゃんは、盾を俺に渡し、剣を蒼く輝かせ敵陣に突っ込んでいく。
ワイトは拘束され、宙で動きを止めている。
俺は盾を構え、トワさんと桜の前に立つ。
突撃するせっちゃんに、ワイトが火の玉をいくつも放つ。
回避できるものは回避し、直撃しそうなものは剣で斬るせっちゃん。
そして、スケルトンの大群とぶつかるタイミングで、地面を踏み込み、大きくジャンプした。
そのまま、ワイトまで距離を詰めるせっちゃん。
ワイトは、石の塊をいくつも放ち、せっちゃんの接近を拒む。
石の塊は、せっちゃんに傷をつけることは出来なかったが、勢いを殺すことに成功した。
そこで、せっちゃんは、蒼く輝く剣を投擲するように持ち替え、ワイトへ投擲した。
剣は、蒼く輝く線を残し、ワイトへと吸い込まれていった。
吸い込まれ貫いた剣は地面に衝突し砂煙をあげた。
せっちゃんが着地する時には、ワイトは光となっていた。
ワイトが倒されたことで、スケルトンの大群も消えて行った。
「せっちゃんだけ、違うゲームしてるみたいだよね」
砂煙を背景に光舞う中佇むせっちゃんの姿をみて独りごちた。
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現在の装備一覧
初心者の剣
初心者の木の盾
初心者の弓
地下足袋
ウエットスーツ一式
ミスリルの短剣
ミスリルで強化済み↓
コンポジットボウ
ウルフの鎧
ウルフマント
リザードマンの皮手袋
リザードマンのアームガード
リザードマンのレッグガード
ミスリルのアームガード
初心者物干しセット
テイムスキル
体術スキル
収納スキル
矢弾作成スキル
水中行動
気配察知
短剣術スキル
回避補正
生活用品一式
醤油
若返りの薬 1本
チェーンソー
大きな棍棒
大きなカイトシールド
魔鉄の剣
魔鉄の槍
ミスリルの槍
ミスリルの盾
ミスリルの腕輪
ガーネットとミスリルのネックレス
ツルハシ 3本
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設備
鍛治設備一式
小さな個室
トイレ
脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)
冷蔵庫
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従魔
ブルーグリーンのヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)
ロリドワーフ(ラズ)ラズベリーショート
でっかいフード付きパーカー 黒
茶色のツナギに黒のタンクトップ
エロスリリス(トワさん)ゆるふわロングダークレッド
ロングカーディガン 白
土下座スケルトン(桜)
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(スケルトンは次回集計ポイントのみ)
ミスリルバグ 2体 Dポイント +1,000
ツナギ等 Dポイント 800
アイス等 Dポイント 100
食事 朝夕変更+3名 2日 Dポイント 120
残 Dポイント 10,320
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