第19話 癒やされた後は

 あれから5日が経った。


 最初のうちは、食事の時もラズを膝に乗せて、後ろからハグしていたりした。

 ラズは「あぅあぅ」と言っていたが、申し訳ないと思いつつも心が癒やされるまで我慢してもらおうと思った。

 それを見兼ねたトワさんが、少し困ったように微笑みながら俺に提案してきた。


「気持ちは分かるけどねぇ……ご主人様、ちょっとこっちに来てくれるかしらぁ」


 そう言って、カーディガンを脱ぎ、目のやり場に困るナイトドレス姿で両手を広げた。


「生気の吸収を出来るかりぎ抑えるわぁ」


 ハグさせていただきました。

 柔らかく温かで、とてもいい匂いがした。


「ラズちゃんだけじゃなく、私達にも頼っていいのよぉ」


 そう耳元で囁かれ、温かな気持ちになった。


 10秒ほどで俺の意識はなくなりリスポーンした。

 その後、せっちゃんもハグしてくれた。

 堅かったけど、その気持ちが嬉しかった。

 ラズも耳を赤くしながら「マスター、僕も嫌じゃないですからね」とハグしてくれた。

 うちの子達は、みんな良い子だ。


 そんな日々を5日過ごすと、心が癒やされた。

 そして、次こそはと決意し、準備することにした。


 前回確認できたのは、水底は砂利で歩くことが可能だったことと、敵はデカいピラニアで突進してくることだ。

 せっちゃんに水中での戦闘は可能か確認すると、頷き、槍を指差した。

 どうやら盾は要らないから槍で突くぞということらしい。頼もしい。


 俺のほうも、スキルを取ることにした。

 気配察知 Dポイント2,000

 回避補正 Dポイント1,000

 短剣術  Dポイント1,000 


 装備もラズに作ってもらった。

 ミスリルの短剣

 ミスリルのアームガード

 

 ショップで購入もした。

 ウエットスーツ Dポイント800

 マリンシューズ Dポイント600

 ダイビンググローブ Dポイント300

 ダイビングソックス Dポイント200


 アームガードはウエットスーツの上からつける。

 前回振り回されて痛い思いをしたからな。


 基本戦術は、せっちゃんの背後にくっ付いて行き、気配察知で敵の場所を伝え、突進してきたところを、せっちゃんに仕留めてもらう。

 もし、槍の突きを逃れて、後ろに抜けてきた場合、俺が対応する。


 見送りのラズとトワさんに、軽くハグしてもらっていると、せっちゃんもしてくれた。

 そして、俺達は気合いを入れて、ダンジョンへと向かった。


 水に入る時、あの時の光景がフラッシュバックし足が止まったが、せっちゃんが先に水の中に入り手をとってくれたことで、踏み出すことが出来た。


 そして、俺達は水底まで来た。 

 恐怖が完全に無くなったわけではないが、せっちゃんがいてくれるだけで、気持ちが楽になった。


 気配察知によると、近くに1体いるようだ。

 そちらに向かってみる。


 すると、こちらに気づいたピラニアが突進してくる。


 怖いが、目を瞑ることなく見ることが出来ている。

 槍の間合いに入り、せっちゃんが槍で突いた。

 水中独特のボォワァっと音がして、ピラニアは貫かれ、光となって消えた。


「ありがとうせっちゃん。もう大丈夫そうだよ。複数来たら、俺も戦うからね」


 グッとサムズアップしてくれた。


 その後も、何体もピラニアを倒した。

 数体同時ということもあったが、前回より回避行動がしやすく、短剣術とミスリルの短剣のおかげで、突進に合わせ短剣をピラニアの胴体に差し込み腹を裂くことも出来た。


 そうして数時間、水底を探索していると、ボス扉を発見した。


 俺達は頷き合い、扉を開いた。

 ボス扉の中にいたのは、巨大なイカだった。

 

 これはクラーケンか?

 俺達だけでいけるのか?

 そう不安に思っていると、俺の肩にせっちゃんが触れ、頷いた。

 頼りになる仲間に、俺も頷き返し、中に突入した。



 クラーケンは、2本の長い触腕で俺達を突くように攻撃してきた。


 せっちゃんが先頭に立ち、槍を使い触腕を弾く。


 しかし、攻撃が弱まることもなく、2本の触腕はせっちゃんを狙い続けた。


 俺は、せっちゃんにタイミングを合わせ切り付けることを伝え、タイミングを待つ。

 せっちゃんは、2本のうちの1本に攻撃を集中させ、もう一本は弾くように防御に徹した。


 攻撃が集中した触腕は、幾つもの刺し傷を負い、攻撃が弱まった。

 

 タイミングは、ここだな。

 

 俺は、せっちゃんに声をかけた。

 もう一本の触腕の攻撃が、せっちゃんによって受け流される。


 そのタイミングを狙い、短剣で斬りつけた。

 触腕の半分以上に入り込みを入れることが出来た。


 クラーケンは、その触腕を引き戻し、残った刺し傷だらけの触腕でせっちゃんを攻撃する。


 せっちゃんは、その攻撃を躱し触腕を掴み引っ張り出した。力は互角かもしれないが、足場は砂利のため、徐々にせっちゃんが引きづられている。


 そして俺に向かって頷く。


 突っ込むことが何となく理解できたので、俺はせっちゃんの肩を掴んだ。


 クラーケンに引っ張られる力を利用して、せっちゃんは地面を蹴った。

 水中に砂が舞い上がり、俺達は胴体部分へ弾丸のように突っ込んでいく。


 せっちゃんの槍が蒼く輝く。


 胴体部分にせっちゃんが槍を突き立て、俺は短剣で滅多刺しにしていく。


 せっちゃんが、槍を深く刺し込むと、触腕が力を失い、クラーケンは光となった。


 ふぅっと息を吐くと、小さな泡となり、光と共に消えて行った。



 俺達はお互いにサムズアップし、戦利品を確認する。

 戦利品は、魔石と紅い宝石がついたネックレスだった。


 そして次の階層へと向かった。


 9階層……そこは戦場だった。

 多くのスケルトンと、人間の兵士達が戦っていた。


 人間は、こちらを見向きもしない。


 ひとまず俺達は部屋に戻った。


 笑顔の2人に出迎えられ、ありがとうと声をかけ、その日は、ゆっくりすることにした。







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現在の装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

初心者の弓

地下足袋

ウエットスーツ一式

ミスリルの短剣


トレント魔鉄のコンポジットボウ

ウルフの鎧

ウルフマント

リザードマンの皮手袋

リザードマンのアームガード

リザードマンのレッグガード

ミスリルのアームガード


初心者物干しセット


テイムスキル

体術スキル

収納スキル

矢弾作成スキル

水中行動スキル

気配察知スキル

短剣術スキル

回避補正


生活用品一式

醤油 

若返りの薬 1本

チェーンソー


大きな棍棒

大きなカイトシールド


魔鉄の剣

魔鉄の槍

ミスリルの槍

ミスリルの盾

ミスリルの腕輪

紅い宝石のネックレス


ツルハシ 3本

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設備

鍛治設備一式

小さな個室

トイレ

脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)

冷蔵庫

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従魔


ブルーグリーンのヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)


ロリドワーフ(ラズ)ラズベリーショート

でっかいフード付きパーカー 黒


エロスリリス(トワさん)ゆるふわロングダークレッド

ロングカーディガン 白

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(魔石のうち3体分はマイナス)

クラーケン 1体 Dポイント +1,000

ピラニア 24体 Dポイント +720

魔石合計 Dポイント 1,630


スキル合計 Dポイント 4,000

ウエットスーツ等 Dポイント 1,900


アイス等 Dポイント 600


食事 朝夕変更+3名 5日 Dポイント 300


残 Dポイント 10,340

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