第2話 ダンジョンへ

 5日経過した。

 はい、まだダンジョンには行ってません。


 何もしてないわけではなく、おじ様の配信から情報を得ていたのだ。

 おじ様の配信には、各所から情報が集まり、検証なども行われている有益な配信になっていた。


 そこで集まった情報は、

・ダンジョンで死ぬと、自分の真っ白な部屋でリスポーンする。

・ダンジョンは、それぞれ違う。

・ダンジョンの入り口付近の敵は倒すとDポント10を得られる。

・敵からは、魔石は確定ドロップ。他のアイテムは確率ドロップ。

・ダンジョンで死んだ場合、手に入れたアイテムはロスト。得ていたDポイントはノートパソコンに転送されているのでロストしない。

・死亡時、転移時に来ていた服と初心者シリーズ以外はロストする。

・敵を倒す際の忌避感は無くなっている。

・入手したアイテム、魔石等は、木箱に入れてDショップで売ることが出来る。

・エルフ、ドワーフ、ケモミミ尻尾等、亜人種が存在している。

・テイムスキルによって、紳士淑女のあれこれを解消出来る。それによりダンジョン攻略が加速した。

・スキルは高い。最低500Dポイント〜。

・ボスを倒すと、次の階層が解放される。

・レベルは表示されていないが、敵を倒していると身体強化されていることを感じられた。


 とりあえず、こんなところか。

 そろそろ俺もダンジョンを攻略開始して、ムフフな性活を!!


 初心者装備を引っ提げて、ノートパソコンからダンジョンアプリをクリックして、レッツダンジョンッ!


 真っ白な部屋の壁に、ダンジョンの扉が現れて、それに触れるとダンジョンに転移された。

 俺のダンジョンは、洞窟型のようだ。

 洞窟の壁には光る苔がいたるところに生えていて、暗すぎるということはない。


 まずは、記念すべき最初の一歩を踏み出す。


 痛いです。


 そうだよね、靴買ってないもんね。


 ま、まぁ、様子みるだけならきっと大丈夫!


 洞窟の幅は縦横3メートルくらいの空間。

 入り口から、10メートルほど進むと右に曲がっていた。

 そして、また20メートルほど進むと左に曲がっている。


 静かだ。


 情報では、入り口近くにも敵が居るはずなのに。


 左に曲がる直前、奥からスースーと何者かの息遣いが聞こえてきた。


 慎重に奥を覗くと、そこにはドラゴンがいた。


 洞窟の通路にギッチギチに挟まっている。


 どうやら寝ているようだが、ドラゴンか。


 真っ赤なドラゴンか。そうかドラゴンね……。


「……無理やん」


 いやまて、最初のダンジョンなら弱いのではないか?

 集めた情報の中には、そんな強敵がいきなり居たなんて無かった。

 ここは、ワンチャンあると踏んで、目ん玉に剣を突き刺してやる!


 俺は意を決して、そろりそろーりと近づく。

 そして未だ開かないドラゴンの瞼めがけ、腕を引き絞り、渾身の突きを放った!



 キンッ



「うん。知ってた」


 パチッと開いたその眼は、眠りを邪魔したクソ野郎を鋭く射抜く。

 スーっと息を吸い込み、ドラゴンが吠えた。


『ギャアァァァァアアアアア』


 パン


 そして、自分の部屋にリスポーンしていた。

 何か最後、情けない音を聞いた気がしたが、えっと……


「咆哮だけで死んだのか……これは詰んだ。なにこれクソゲー?」


 気持ちを落ち着けるためにも、おじ様の配信を聞こう。


 DTubeをクリックして、落ち着きのあるダンディーな声が聞こえてくる。


「ふむ、皆攻略は順調のようだね」


【まだ亜人種いない】

【1階層に亜人種いたワイ勝ち組】

【2階層でようやくいたけどドワーフやった】

【ドワーフロリ?】

【ドワーフやっぱ髭?】

【まだドワーフのメス見てない】

【どんな感じか教えてー】

【ドワーフは、雄はイメージ通り。雌はロリ】

【ッ!?】

【!!!!】


「有益な情報ありがとう。リストに記載しておくよ」



 ふむ、ロリか……俺は興味ないな。(吐血


 さて、俺も質問してみよう。



【入り口から進んだら、ドラゴンが通路を塞いでいました。どうすればいいですか?】


「ん? これは難題だな。他に敵はいないのかな?」


 お、拾ってくれた。ありがとう! おじ様!


【はい、敵はドラゴンのところまで何も出ませんでした】

【運なさすぎ】

【これは引きこもり確定では】

【詰んだ詰んだ】

【草】

【草】


「それは……うーん。遠距離からチクチク攻撃するしか、無いかもしれないね」


 あぁやっぱそれしか無いかぁ……でもポイントもないから遠距離装備買えないのでは?


「遠距離装備は、銃や弓、クロスボウとかかな。スキルに魔法のようなものもあるけど高いからね。弓でも最低値の固定ダメージ1だから打ち続ければ、可能性があると思うよ」


 おじ様! 一生ついて行きます! 可能性があるだけマシです!


【ありがとうございます。頑張ってみます】

【草】

【がんば】

【逝ってこい】



 さて、とりあえず弓がいくらなのか、見てみよう。


 Dショップから弓のページを開く。

 ずらっと様々な弓がリストアップされている。

 最安値をチェックすると、初心者の弓(矢数∞)がヒットした。


 値段は300Dポイント。ギリギリ買える!


 即クリックして購入。


 ついでにトイレットペーパーも12ロールで20Dポイントのやつも購入。


 これでほぼ文無し、背水の陣!


 早速装備を取り出し、ダンジョンへ。



 曲がり角までくると、またしてもドラゴンの寝息が。先制のチャンス。


 弓を構え、矢をつがえ、腕をひき、放つ!


 バチンッ


「イッた!! 手にバーンって! 痛ッ!!」


 矢は、2メートル先の地面に刺さっていた。


 スーーーーーーーー


「あ……」


 黄色い爬虫類の眼がこちらを見ています。口を大きく開けて。


ゴォオオオオオオオオオォォォォオオオオオ


 燃え盛る真っ赤な壁に全身を包まれ、リスポーンした。



「無理ゲー」

 

 不貞寝した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

初心者の弓 Dポイント 300

トイレットペーパー 12ロール Dポイント 20

残Dポイント 60





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