第8話大学自主退学

佐々木は後期の授業料が60万円だと言う事を両親に言えなかった。

父親は、トラックの長距離運転手であり母親は子宮ガンが見つかり入院していた。

勉強は大学だけじゃない。働いていても、出来る。大卒ブランドがモノを言う時代ではない。実力主義だ。

佐々木は、大学に退学を申し込んだ。

サークルの誰にも、連絡せず鹿児島に戻った。

そして、自宅で法律の勉強をしながら、ガードマンのアルバイトを始めた。


佐々木はサークル仲間の事を考えていた。

しかし、今さらさよならを告げてもどうしようもないし。

彼は夏になると、あのサークルの珍道中を思い出した。

大学を卒業したかった。だけれども、我が家の経済力を見ると大卒は難しい。

バイトを3つ掛け持ちしていたが、生活費や定期代で消えて行く。もう、無理だ。


佐々木はある小さな会社に就職した。給料は高卒の為に大卒より4万円少ない。

だが、能力給と言うものがあり、大卒より能力給は高かった。

名ばかりのバカ大学を卒業して、私は大卒でござると威張っていたヤツラはほぞを噛んだ。

それにしても、佐々木は会社近くの大学に通う学生を見ると羨ましく思えた。

もし、将来、家庭を持ち子供が大学に行きたいと言っても卒業できるくらいの貯蓄はしようと。

育英会の奨学金だけでは足りない事が分かっている。

だから、僕は子供の将来の為にも働くのだ。


期間は短かったが、大学生時代は貴重な経験となり、佐々木は自分の人生の選択は間違えていなかったと、確信しているのであった。


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我らが大学生セレナーデ 羽弦トリス @September-0919

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