糖衣錠の毒
魚野紗芽
糖衣錠の毒
吹く風の冷たさに、手をポケットへと隠す。すると、指の先になにやらカサカサとしたものが当たった。なんだ? と取り出すと、出てきたのはのど飴であった。
自分で買った覚えはないが、そういえば昼休みに貰った気がする。いや、絶対にそう。
効き目よりも味を重視していそうなパッケージの封を切る。中身は毒みたいな鮮やかな紫色であった。別に毒が紫っていうのはただのイメージなんだけど、と思いながら口に入れる。からころとブドウ味が口の中を転がった。
毒じゃなくても、口に入れるにはかなり怪しい色ではある。このパッケージに入っているから、こんな色でも安心して口に入れてしまう。
包みひとつで、案外簡単に毒を飲まされてしまうのかもしれない。人って。
『なんかさ、毎日おやつくれるよな。コウちゃんって。餌付け?』
『うーん……トウヤがそのおやつ見つけた時にさ、毎回おれのこと思い出して欲しいから、かな?』
あ、もうこれって毒だったのかも。俺にとって。……俺だけ、の。
やけに甘い毒が口の中を転がる。
糖衣錠の毒 魚野紗芽 @uo_uo_uono
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