第3話 妖怪・手元配信の手元が狂う女
「今日は、リスナーからもらったホルモンをお鍋にしますぅ」
「わーい」
ユマさんの言葉に、ボクもあとで続く。
「では、いただきまーす」
「食べよう食べよう」
ボクたちは、ふたりともお酒を飲まない。
ユマさんもボクも、飲むと身体がマダラ模様になってしまう。
一番飲ませてはいけないタイプの、酔い方をするのだ。
注射のアルコールは平気だが、経口だとダメっぽい。
だからホルモン鍋って、ちょっとクドいかなと思っていた。
「ん。すっごいトロトロ!」
「わかる。焼肉とはまた違う世界だね」
口の中で溶けていったホルモンを噛み締め、ボクは考えを改める。
いいホルモンって、お酒さえ必要としない。
お茶で十分だ。
「はあ。おいしいね」
「野菜も、ホルモンの脂を取り込んで、ジューシーさが増してるよ」
鍋の中はギトギトになっているのに、ちっともみずみずしさが失われない。
これがいいホルモン鍋なのか。
気がつくと、ホルモンの袋が一瞬でなくなっていた。
「どんだけ、食べたんだろう?」
「ぺぇくんは男の子だから、そりゃあいっぱい食べてるよぉ」
リスナーに聴いてみよう。
さっきまで手元配信だったから、どっちが多く食べているか見ていたはず。
「……ユマさんの方が七割食ってる、だって」
「えーっ!? ウソウソ。絶対ウソーッ」
そういいながら、まだユマさんは口の中をモゴモゴさせている。
「さて、シメなんだけど」
「ライス!」
「そうなの? てっきり麺だと思ってたんだけど?」
「いや、ウチって鍋のシメって雑炊なんだよね」
「でも、けっこうな脂だよ?」
ボクは、鍋の中をオタマでかき混ぜた。
これに麺を投下して、全部飲み干したいなと。
「この脂を、米でいただきたいなと」
「そうか。わかった。リスナーに意見を募ります」
「米だって」
だが無情にも、麺が圧倒的に勝利した。
「勝ったのは、中華麺でした」
「そっかー。モツ鍋のシメはそうなんだねぇ」
シメとして、中華麺を大量に放り込む。
同封されていたチキンスープも、ドバっと。
「ズルズル! うん! これだ」
「でしょ?」
「これに」
ユマさんが立ち上がった。
炊飯器に、ユマさんは直行する。
「米だよ」
漫画盛りの米を用意して、ホルモン麺をおかずに米を食らう。
あああ、ダメだ。それは、いけない。
「ユマさん」
「なんでしょう?」
「ボクも」
「ちゃんと残してますって」
ユマさんが、ボクのお茶碗も漫画盛りにしてくれた。
「ああ。炭水化物と炭水化物のコラボって、どうしてこんなに幸せなんだろう?」
「ボクたちみたいだね」
「あー! 今言おうと思ったのに!」
ユマさんは悔しくて、もう一杯おかわりした。
ボクたちは配信中だと忘れて、翌日にバズったと気づく。
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