第6話バイトの内容と記憶1
『あれ、緋崎君も?』
『ああ、なんだ、お前もか?』
『ぼくもいるよ』
『あっ‥浅黄君も‥‥‥』
『なんで、君たちがここにいるのかね?』
その独特な言い回しで疑問符を放った緑川に、和也は首を傾げる。
『緑川君も?』
『黒ちゃんに、緑ちゃんがいるってことは、あいつ等もいるのかなぁ?』
『おいっ‥俺を抜かすんじゃねぇーよ‥‥‥』
『いや、キミを抜かしているわけじゃないよ。ただ、中学時代の友好を確認しているだけだよ』
少しズレている?緑川の発言に、帰国子女である緋崎は仲間はずれにされた感を拭えないまま、小さく舌打ちして、噛み付くのを止める。
『チッ』
その2人の遣り取りに一切頓着することなく、和也は首を傾げて聞く。
『で、順番は?』
そんな和也に、浅黄は溜め息を吐く。
『ふぅー‥相変わらず、黒ちゃんてば、とことんマイペースだよねぇ‥‥‥‥』
そんな中、突然指定された通路の反対側のドアが開く。
全員が、ドアを開く微かな音に反応して振り返る。
その場にいた四人の視線を受けた、若い白衣を着た研究員風の青年は頓着することなく口を開く。
『ちょっといいかなぁ? 君たち、今日のバイト君たちだよねぇ‥‥‥‥』
四人は、体育会系らしくいっせいに応える。
『『『『あっはい』』』』
気持ちの良い返事をした四人に、声をかけた白衣の青年は、にっこりと笑って、手に持っている書類らしきモノを見ながら言う。
『えぇーと、僕のところは‥‥‥緑川君ている?』
緑川は手を上げて応える。
『はい』
それを見て頷く。
『そう、君が緑川君。君は僕のところね。で、僕のところの左隣りのピンク色のプレートの部屋が、浅黄君』
『はい』
返事をして、浅黄はドアの前に移動する。
『それで、反対側の通路の‥‥‥薄い水色のプレートが付いているのが、緋崎君ね』
『うっす』
頷いて、緋崎はそのドアの前に移動する。
『んで、オレンジ色のプレートのところが、黒沢君ね』
『はい』
和也も指定されたドアの前に立った。
全員がドアの前に移動したのを確認し、白衣の青年が行動の指示をする。
『もう直ぐ、各部屋のコンピューターの最終調節が終わると思うから‥‥‥君たちは、受け付けのところで指示された通り、三回ドアをノックして、名前と年齢を言って待機してね。たぶん直ぐに入室の許可があると思うから‥‥‥ってことで、僕のところはもう調整終わっているから、緑川君入って‥‥‥』
『はい』
白衣の青年の指示で、緑川はそのままドアを潜り、姿を消したのだった。
ドアが閉まり、1人消えたのを機に、三人は白衣を着た青年に指示された通り、ドアをノックする。
和也は、その時のことを思い出し、やっと今の状況に陥った理由を見付けてホッとする。
あの後、ボクも指定された部屋のドアをノックして‥‥‥。
重かった身体から精神が解放され、思考がクリアーになった和也は、その時の続きを思い出す。
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