第5話原因は、やっぱりアルバイトらしい
肉体は、灼熱地獄の砂漠を延々と歩いたことによる疲労で、とにかく休息を必要としていた。
が、それは肉体だけで、和也本人の意識は、砂漠で目覚めた原因を探っていた。
肉体と精神が分離した和也は、自分の脳内の記憶を一生懸命に探って行く。
確か‥‥‥ああ‥そうだ‥‥やっぱり‥‥‥これって‥‥バイトだったんだ。
記憶を遡ること数時間前。
和也は男子バスケ部の監督を兼任する、二年の相沢梨花に呼び止められていた。
『黒沢君、時給の良いアルバイト探してるって言ってたわよねぇ‥‥‥』
万年金欠に近い和也は、梨花の言葉に、尻尾があったらブンブンに振っているだろう笑顔で応じる。
『あっ‥はい‥‥バイトできる時間って限られているので、出来るだけ良い時給のを探してます』
『それは良かったわ‥‥‥今回のは時給が良いわよ。しかも、肉体労働じゃなくて‥頭脳労働だから‥はい、これが紹介状ね。住所はここよ。はい、地図ね。行けばわかると思うわ』
にっこりと笑って梨花に差し出された紹介状を、和也はいそいそと受け取った。
良かったぁ‥‥あの刀のローン‥結構キツイんだもん‥‥‥でも、心底欲しかったんだもん‥‥相沢センパイ感謝。
そして和也は、紹介状片手に、手渡された地図が示す場所に向かったのだった。
和也が着いた先は、どう見ても研究所のような場所だった。
ここでいいんですよねぇ?
渡された紹介状の場所を改めて確認し、和也は受け付けらしい窓口に声を掛けた。
『スミマセン‥ここの紹介状もらって来たんですけど‥‥』
そう言って、和也は梨花から渡されたバイトの紹介状を受け付けの女性に差し出したのだった。
紹介状を受け取った女性は、中を開き、書かれている内容と和也を見比べてにっこりと微笑んだ。
『はい、確かに‥‥えーと、海誠高校一年生の黒沢和也君十五歳で良いのかな? 部活はバスケ部?』
本人確認に、和也はコクッと頷く。
『はい、海誠高校一年生・黒沢和也・十五歳です。部活はバスケやってます』
受け付けの女性は、バイトに必要な書類に受け付け記入をしてから、和也に書類を手渡し、奥を指差して言う。
『えーと‥‥君は、スポーツマンの部で応募になってるから‥このまま真っ直ぐ行って、突き当たりの一番左側の部屋に三回ノックしてから、名前と年齢を言って待機してね。中から入室許可が下りたら入ってね』
そう言って、和也にバイトの為の書類を手渡し、にっこりと微笑んだ。
詳しく説明されていないのでどんなバイトか判らないまま、和也は受付の女性に手渡された書類を持って、指定された場所へと向かう。
えーと、突き当たり一番左の部屋‥‥‥と‥‥‥‥。
言われるまま歩いて行った先には見知った顔があった。
『あれ、緋崎君も?』
『ああ、なんだ、お前もか?』
『ぼくもいるよ』
『あっ‥浅黄君も‥‥‥』
『なんで、君たちがここにいるのかね?』
その独特な言い回しで疑問符を放った緑川に、和也は首を傾げる。
『緑川君も?』
『黒ちゃんに、緑ちゃんがいるってことは、あいつ等もいるのかなぁ?』
『おいっ‥俺を抜かすんじゃねぇーよ‥‥‥』
『いや、キミを抜かしているわけじゃないよ。ただ、中学時代の友好を確認しているだけだよ』
少しズレている?緑川の発言に、緋崎は噛み付くのを止める。
『で、順番は?』
首を傾げて聞く和也に、浅黄は溜め息を吐く。
『ふぅー‥相変わらず、黒ちゃんてば、とことんマイペースだよねぇ‥‥‥‥』
そこに、突然通路の反対側のドアが開く。
『ちょっといいかなぁ? 君たち、今日のバイト君達だよねぇ‥‥‥‥』
その場にいた全員が、体育会系らしくいっせいに応える。
『『『『あっはい』』』』
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