第23回『車』:車林の下

 車林しゃりんの下の人々は、天涯たる車林を深く強く信望する。苛烈な日射しを受け止めて、清浄な空気を提供する。水も食も家も生活全てがそこにある。代わりに反り上がる壁幹の世話を行い、壁幹の回転に合わせて移動する。それを何百年も繰り返す。たまに昔話に憧れる。青空に憧れる。


 車林の上の人々は、蒼穹を見上げ限られた資源と空間で細々生きる。歴史は語る。争いと破壊、海も山も無くなった地。反省と継承と回復への期待で彼等は辛うじて生を繋ぐ。


 遙か昔。

 生き残った科学者は夢想する。世界は亀象ではなく車の上に存在する。スモッグのない気流が流れ、温暖化に耐えうる高度で、移動が可能で、回復能力を内包する。車輪の形に育つ巨大樹。

 車林を。

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300字の独り言(二言目) 森村直也 @hpjhal

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