第21回『まさか』:告白

 ニュースメディアは『まさか』で染まり、世間は有名人のスキャンダルで騒ぎ続ける。『やっぱりね』――無名の個々の呟きはまるで道端のゴミのよう。

 会見場の世襲政治家大臣は『まさか』に相応しい人柄だ。しかし控える第一秘書は。

 地方出身の地味女性。有名私大で政治メディア論を専攻し、大手広告代理店を経て政治家秘書へと転身した。隣国系の容姿を隠し、戸籍に父親の名前はなく。母親とも死別しており、極右企業の奨学金で進学した。冥い瞳で周囲を見つつ敢えて黙した学生時代、僕は彼女を救えなかった。


 離島が隣国に占領され、政府は防衛戦を宣言した。精密に誰かに描かれた地図の通りに。


『まさか』とは無知と無関心の告白だと。

 僕は思う。

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