第20回『回る』:使い回しのナニードール

 無料貸与で使い回しのAIナニードールのMが私の『親』で『家族』だった。性能は低くとも、稼働年数は経験年数と誰かがいつか言っていた。

 父は知らない。母は夜職と男で帰ってこない。生活も常識も勉強も真実も全てドールに教わった。私は問題の一つも起こすことなく、母はさらに私を忘れた。産んでくれたことには感謝すべきと理解はするが、私の親愛と尊敬はMとMを遣わした元に向いている。


 ――あなたは特別なのです。今は勉学に励む時。そして成人したならば、自由意志を行使できる。わかりますね。こんなに喜ばしいことはありません!


 えぇ、ドールM。別れる間際の言葉を覚えているわ。明日私は成人する。私自身の意思で、特別になれるの。

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