第16回『憧れ』:“憧れ”の魔女<タブレットマギウス>

 入室した少女、のはずだ。化粧どころか身長体型まで変わって去る。もちろん僕は三度見した。

 次の男はそのままだった。堪えきれない笑みを口端に浮かべている。

 そして僕らの番が来た。

 艶やかな髪、調いすぎた綺麗な顔、紅色の唇。印象的な瞳が先輩を見て細められた。

「坊やかい。今日はその若いのか」

 美男美女何にでも変化させられるという容姿特化の電書魔術師、とは聞いてはいた。

「ベッドはそこだ」

 魔女は電魔書を調整する。タブレットをタップする。


「あれで米寿超えさ。魔術をスクラッチ出来る最古参の技術者だ。俺達が憧れた魔女さ」

 質量保存則はどこへ行った。

「潜入捜査、頼んだぞ」

 先輩は腕の中の猫の姿の僕を名残惜しそうに撫で続ける。

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