第15回『酔う』:宇宙で機械を使うには

 人間では高すぎる。ゼロG用でもまだ高い。地上の汎用機でどうにかこうにか益が出る。なら選択肢はそれしか無い。

 コンテナに詰めて税関を通す。廃材利用の名目で貨物エレベータに一式押し込む。コンテナのままバスに乗せ、壁があるだけの巨大な樽に辿り着く。

 着いてしまえば、こっちのもの。

 無重力酔いを押して立つ。微小重力でもホッとできる。コンテナを開く。廃棄寸前のポンコツ機材のスイッチを入れる。

 LEDが光り出す。シークエンスが進み始める。アームは明後日に伸びて行き、レッグは泳ぎ、センサーがただ空回りする。

 まるでそれは酔っ払い。


『1G用には制御に重力センサーが使われていまして』

 高い通信費が無情で乾いた事実を告げる。


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