第13回『白』:画板の景色

 無垢な画板が最初にあった。


 渡された色しかなかったから、その色で描くしか無かった。――違う景色を描きたかった。

 違う色を見つけたから、元の景色に足してみた。――ちぐはぐでも満足だった。

 憧れ色を手に入れて、景色にひたすら重ねてみた。――現れたのは憧れ色とはかけ離れ。

 友人知人恋人から、色をもらうこともあった。――重ねる度に濁りは深くなっていく。

 純粋色とはほど遠く、透明な画板が目に痛い。――それが大人になることと、知らない誰かのしたり声。


 塗って落として広げて潰して。手探りで、ただ暗黒を。


 ――光らせたら?


 最初の色を光らせた。

 次の色。憧れ色。加えた色。汚泥は徐々に薄くなり。

 いつか、深く豊かな白い光が現れる。

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