第9回『育つ』:生命の木<タブレットマギウス>

 白い木だと思った。白く見えたのは光を反射屈折していたからで、木だと思ったのは枝葉を伸ばしたその形のためだ。教授と名乗ったおじいさんが軽々と鉢を持ち上げて僕は緩慢に首を傾げる。木?

「植物はフラクタルの性質を持ち、フラクタルに成長する。わかるかね」

 今度の木は暗い色で半分透き通って見えた。顔を寄せる。半分コルクで半分ガラスの何かに見える。息を呑む。それだけで息があがる。

「置換は融合。そして自己相似のメカニズム。その原則さえあれば、生物は勝手に育ち適切な機能形状を持つようになる。君の心臓も」

「僕、走れるように、なる?」

「なるとも」


 MANAと細胞の融合を促す電書魔術『言語』はやがて禁止されることになる。

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