第8回『鳥』:鳥があり草木がそよいだ
鳥の多い島だった。東側には岩の山、西側は遠浅の低地だった。鳥は東崖に営巣した。人は平地に集落を作った。糞は肥やし、卵は食事。獲った魚の一部は鳥に、畑の害虫もまた鳥に。鳥と人は共存していた。
その島は赤道直下に位置していた。
時代が下り人の生活は変わり始める。漁は減り、畑は減った。
やがて天を貫くケーブルが下ろされ、鳥はもはや害へと変わった。だから鳥が姿を消した時、誰もそれに気を留めなかった。
「鳥があり草木がそよいだ。人が気づき共にあった。鳥は歌う島に月日あるかぎり」
古謡が宴で披露され、軌道エレベータとともに宇宙時代が幕を開ける。
ケーブルの係留杭は昏く深く打ち込まれ、死んでいたマグマ溜まりが動き出す。
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