第5回『待つ』:雨傘遊び <タブレットマギウス>

「『傘』入れて! 俺の容量カツカツなんだ」

 女の子にいいとこ見せたくて、安物のSIMを限界まで使うから。

 僕は溜息吐きつつボロタブレットを取り出した。鈍いスワイプで傘の魔術書を起動する。起動している。

「遅い」

「うるさい」

 普通のSIMなら一瞬起動。日常使いの簡単な魔術だ。けど。

 最近の魔術は使えない。起動にすらも時間がかかる。数世代前の骨董SIMは、だけど少し特別なんだ。

「はいよ」

「サンキュ!」

 MANAの『傘』が雨を弾く。弾いた箇所がちらちら輝く。

「これいいな。魔術書教えてよ」

「これはこのバージョンのSIMのバグ。市販のじゃ再現しないよ」

 虹が溢れる光が遊ぶ。雨が少しだけ好きな理由。


「今度貸して」

「やだ」

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