第4回『靴』:お手柄下男

 泥濘んだ地面には四つの靴跡があった。二枚歯の下駄、草鞋、男物の洋靴、そして、華奢な女性のハイヒール。

「森だ!」

 警備人は雑木林へ入っていき、下男の一人は屋敷へ向かう。深夜の幽霊騒ぎを忘れるために開催された舞踏会のその最中、消えたお嬢様の兄上へと下男は耳打ちする。

「お嬢様はまだ中です。あの靴跡は偽物です」

 地面への沈み方は目方のある女性のもの。茂みは狭く跡がない。地面に落ちていた長髪の断面は楕円で、お嬢様のものは真円。髪に残る洗髪料の香も違う。

 下男を連れて屋敷を捜索した兄上様は、程なくお嬢様を発見する。


 後日、お手柄の下男には十分すぎる報奨が与えられ。

「深夜の幽霊に心当たりは?」

 即時解雇とあいなった。

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