第3回『おくる』:壮行歌<科楽倶楽部>

『壮行歌』と誰かが言った。壮行の意味には違いなく、返されることがないのだから勝手に歌うものであろうと。

 内容は映画にドラマに歌謡曲、政治経済スポーツに最新ニュースやら教育番組、自然科学に真面目な研究。ありとあらゆる娯楽情報。送信量は用意可能な最大量。受信は適宜なされれば良い。

 ソーラーセイル方式だから誤差レベルの助力になろう。聞きたくないなら聞かねば良いし、聞きたいはずだと信じてもいる。

 太陽光を推進力に加速を続ける移民船は世紀を超えて孤独に旅する。あらゆる種からなる数万人の小さな世界はいつか独自の文化を生むだろう。聞こえなくなるまでの僅かな期間、光に混ぜ込まれたこの歌が彼らの支えになることを願う。

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